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超高齢社会に対応した人材育成を

2014年5月9日 (金)

 今年の薬剤師国家試験の合格率は、空白期間の2010年(第95回)、11年(第96回)を除き、過去20年で最も低い60・84%にまで落ち込んだ。

 6年制新卒者の合格率が70・49%と平均的な水準だったのに対し、6年制既卒者の合格率が39・85%と低かったため、既卒者が全体を大きく押し下げる結果となったが、前年より約18ポイントも低下している点が気になる。

 厚生労働省は、6年制になってから、医療現場で通用する実践力などを確認するため、基礎的な知識を応用して回答する問題を増やしており、「そうした問題への対応が不十分だったのでは」との見方を示したが、「極端に問題を難しくした認識はない」としている。むしろ、旧4年制時代には80~90%台を推移していた新卒者の合格率が、かろうじて70%台を維持するにとどまったことを踏まえ、「学生の質低下が要因の一つ」と分析する。

 薬学部・薬科大学は、規制緩和によって新設が相次いだ結果、多くの大学が定員割れを引き起こし、教育や学生の質低下を懸念する声が上がっていた。今回の合格率低下は、この新設ラッシュにより、起こるべくして起こった事態とは考えられないだろうか。

 教育関係者の中からは、大学の新設を認めた規制緩和に問題があったとして、文部科学省などに問題解決を求める声も上がっているが、大学側も教育の質を確保するために適正とされる定員数、確保すべき教員の数などを検討し、改善につなげる取り組みが必要だ。

 12年度の厚生労働科学研究「薬剤師需給動向の予測に関する研究」(研究代表者:望月正隆・薬学教育協議会代表理事)では、「薬剤師の過不足が直ちに問題になるとは考えにくい」としながらも、「10年単位では今後、薬剤師が過剰になるとの予測について、否定できるものはない」との見通しを示した報告書をまとめた。

 多少、分かりにくい表現になっているが、10年後には薬剤師が過剰になる可能性があることを示唆しており、関係者はこの事態をもう少し重く受け止めるべきだ。

 10年後には“団塊世代”の多くが後期高齢者になり、医療や介護の面で大きな変革が求められる「2025年問題」が訪れる。それに対応できるだけの医師や看護師がほぼ見込めない中、薬剤師に期待されるのは、地域住民への健康サポートやアドバイスといった新たな役割だ。

 厚労省は、14年度予算で2億4000万円を計上し、都道府県を対象とした「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」を進めるなど、かかりつけ薬局機能の強化に向け、必死に旗を振っている。4月の調剤報酬改定でもかかりつけ薬局の評価を手厚くしたが、実際のところは容易ではないだろう。

 厚労省があるべき薬剤師と調剤業務の姿を改めて求め出した時に、最低水準の合格率を出してしまったことはタイミングが悪いと言わざるを得ないが、「2025年問題」は待ってはくれない。

 薬剤師教育の抜本的な改革と共に、調剤薬局や病院の薬剤部も含め、業界全体で超高齢社会に対応できる薬剤師をどう育成していくかを考えることも急務となる。




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