渡辺氏(アトル社長)‐薬価制度維持と販促に貢献
日本医薬品卸業連合会国際委員の渡辺紳二郎氏(アトル社長)は、卸ルートの医薬品販売の比率が世界で低下する中で日本では97%と高い水準を維持し、専門領域の医薬品も別会社を置かずに扱うケースが多いことを説明した。
また、自然災害リスクの大きい日本では、発災時の事業継続が重要になることを指摘し、「東日本大震災の際にも翌日から医薬品供給を開始して他の業界より早く機能を回復した」と強調した。市場実勢価格主義の薬価制度において卸を通じた実勢価の調査が不可欠なことから、「われわれの支援がなければ結果的に公定価格が維持できない」と述べた。
卸業界の現状については、卸の粗利益が低下傾向にあることや、業界再編によって1990年代に381社あった医薬品卸企業が2014年には83社まで統合が進み、4大卸グループのシェアが全体の80%に達することを報告した。
さらに、日本卸の付加価値サービスの最大の特徴としてMSの存在を挙げ、「毎朝、MSとメーカーのMRが行動予定を確認し、強いコラボレーションでMSとMRが一緒に動く」と紹介。こうした米欧と全く異なるスタイルが必要な理由として、納入先が約17万と膨大なことから、「全ての開業医をMRだけでは対応できない」としたほか、価格交渉がMSの重要な機能のひとつであるため、「MRはMSと非常に緊密に協力することになる」と述べた。
流通面での付加価値事例として、購買から在庫管理、発注、病棟搬送まで医療機関内の業務効率化に卸が貢献していることや、共同受発注システムの運用によって卸・医療機関の双方に利便性をもたらしていることを示した。
最後に渡辺氏は、「われわれは薬価制度の維持機能とメーカーの販促機能の一部を担っている。日本の総合商社のように、日本の卸も日本語で“OROSHI”と呼ばれることを願っている」と締めくくった。