日本薬剤師会副会長 石井甲一
日本薬剤師会における今年の最大ニュースは、新たな山本執行部の誕生ということでしょう。6年間にわたる児玉体制を引き継ぎ、6月末から新執行部が船出しましたが、委員会の設置、委員の選出等により、新執行部の活動は実質的に10月からとなってしまいました。新たに設置された委員会には、会長から具体的な諮問事項が示されており、それぞれの委員会は諮問に答えるべく活動を始めています。
さて、この1年を振り返ってみると、薬剤師業務にかかわる多くの動きがありました。まず、4月には診療報酬・調剤報酬および薬価基準の改定が実施されました。消費税が8%に引き上げられたため、診療報酬本体の改定率は、消費税引き上げに伴う対応分を含めてプラス0・73%で、調剤報酬についてはプラス0.22%であり、薬価の引き下げを考慮すると厳しい改定でしたが、医科・調剤の比率は1:0.3が堅持され、公平な改定となったことは評価できるものでした。
また、薬剤師会にとって重要な事業である「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進事業」が今年度からスタートしました。昨年6月に閣議決定された日本再興戦略を受けた政府予算による事業であり、処方箋応需のみならず、セルフメディケーションへの支援など薬局の持つ幅広い機能を発揮することが求められているものと捉えています。
事業内容を見ると、4月から自己採血による簡易検査が薬局等において可能になったことを受けて、都道府県によっては事業として実施するところもあります。日薬としては安全で適正な検査業務が行われるよう、政府より示されています「検体測定室に関するガイドライン」を踏まえた手引書の策定を行っているところです。
6月には、昨年12月に改正された薬事法と薬剤師法が施行され、薬剤師による対面販売が義務づけられた要指導医薬品の供給時における対応等の徹底が求められ、日薬では「要指導・一般用医薬品販売制度対応の徹底に向けた行動計画」を策定し、都道府県薬剤師会を通じて会員への周知を図りました。
また、6月には骨太の方針2014の策定過程で、薬価の毎年改定の議論が巻き起こり、製薬業界、卸業界等と共に反対活動を展開し、「改定の頻度を含めて検討する」との閣議決定となり、ひとまず毎年改定は避けられました。
夏には喜ばしいことが起こりました。山本信夫会長が国際薬剤師・薬学連合(FIP)の副会長に選任されたことです。わが国の薬局薬剤師がFIPの副会長となるのは初めての快挙であると受け止めています。
11月、消費税が8%に引き上げられてからの経済動向を勘案し、来年10月に予定されていた10%への引き上げを1年半延期することを安倍総理が決断しました。特に、7―9月期の経済状況が予想よりも改善せず、このまま再度の消費税引き上げが実行に移された場合の経済成長に与える悪影響を考慮してのこととは思いますが、2016年4月の診療報酬・調剤報酬改定への財源がどのようになるのか心配となります。
さて、来年の展望ですが、来年度政府予算案の決定が越年となってしまったため、夏に示された概算要求の内容がどのようになるのか予測できませんが、日薬としては「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進事業」が引き続き実施されることを強く望んでいます。
特に、日本再興戦略改訂2014の中短期工程表によれば、来年度事業では、充実した相談体制や設備を有する薬局を住民に公表する仕組みを検討するとしており、公表基準の検討が行われることが予想されますので、日薬としては重大な関心を持って見守ることになります。また来年度は、16年度診療報酬・調剤報酬改定に向けての議論が、中央社会保険医療協議会を中心に本格化されることになり、日薬として適切な対応に努めていくことになります。
最後に、今年6月に閣議決定された「骨太の方針2014」では、「医薬分業の下での調剤技術料・薬学管理料の妥当性・適正性について検証すると共に、診療報酬上の評価において、調剤重視から服薬管理・指導重視への転換を検討する。その際、薬剤師が処方変更の必要がないかを直接確認した上で一定期間内の処方箋を繰り返し利用する制度(リフィル制度)等について医師法との関係に留意しつつ、検討する」とされており、どのような検討がなされるのか注視しつつ、積極的に薬剤師の活用に向けての働きかけを進めていかなければなりません。
新執行部では、行政や医療関係団体との連携をより良好なものにするべく努めており、来年も継続していかなければなりません。真に国民のための適正な医薬分業制度の構築に向けて、努力していかなければならないと思います。