経済産業省の「セルフメディケーション推進に向けたドラッグストアのあり方に関する研究会」「コンビニエンスストアの経済・社会的役割に関する研究会」が報告書をまとめた。
ドラッグストアの報告書では、医師等と連携して消費者を医療機関につなぐ機能を持ち、消費者ケアを行う仕組みの構築を提言。これを受け、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、業界で統一した「受診勧奨ガイドライン」策定を検討するとした。
コンビニが健康産業化などに役割を果たしていく方策をまとめた報告書では、24時間営業の利便性を最大限に活用する観点から、医薬品販売のさらなる環境整備を政府に提言している。
政府の規制改革会議が医療用医薬品や体外診断用医薬品のスイッチOTC化促進に圧力をかけているように、かねてから官邸はセルフメディケーション推進の旗を掲げている。
官邸とのつながりが強い経産省が相次いでこうした報告書をまとめたということは、セルフメディケーションの推進には、ドラッグストアやコンビニが主体的に関わり、さらには厚生労働省ではなく、経産省主導で進めたいという政府のメッセージなのではないか。
厚労省は、数年前から、保険薬局に一般薬を置けと言い続けているが、薬局の現場では、それがどこまで浸透しているのか気になっていた。
先月の医薬分業協議会では、北海道薬剤師会が厚労省の健康情報拠点事業を始めるに当たり、会員薬局を対象に行ったアンケート調査の結果を報告した。25%の薬局が一般薬を1品も在庫しておらず、このうち半数以上の薬局が「需要がない」との理由から「今後も取り扱う予定がない」と回答した。
結果を報告した演者は「意識改革を行っていく必要がある」としたが、これが多くの薬局に当てはまる現実なのではないだろうか。
一般薬を置いてニーズを掘り起こす、といったことは手間がかかるし、処方箋調剤で儲けが出る報酬体系になっている以上、そのための体制整備に二の足を踏むのも無理はない。
ただ、そうこうしているうちに、24時間営業のコンビニで一般薬が置かれ、一般薬を安く販売するドラッグストアでの健康相談が普及していく。そうなれば、薬局はセルフメディケーション領域で主役の座を奪われ、かかりつけ薬局になるためのツールの一つを失いかねない。
健康情報拠点事業には、国からの予算がついているが、国の財政が厳しい中、いつまで続くか分からない。予算に頼らず、「自分たちで必ずやらなければならない事業」にするという意識がなければ、新たな展望は開けない。
医薬分業に対する批判が高まる中、官邸とのつながりが弱いとされる厚労省にも「もうひとがんばり」を期待したいところだが、日本薬剤師会には、「もうあとがない」という覚悟を持って事業に取り組んでもらいたい。