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産業政策、求められる柔軟な戦術

2007年9月12日 (水)

 政府の経済成長路線の旗手となった医薬産業に対する産業政策に必要なツール、施策の方向性は出揃った。厚生労働、経済産業、文部科学の各大臣はじめ、産学官のトップが施策の方向性を話し合う官民対話。そこでまとめられた革新的医薬品・医療機器創出5カ年戦略。それを盛り込んだ骨太の方針の閣議決定。戦略の裏打ちの土台となる予算概算要求。厚労省によって新医薬品産業ビジョンも策定された。

 業界側も日本製薬団体連合会が、薬価制度改革案をまとめ、中長期的に導入を求める新制度案も提案した。特許期間中は薬価の引き下げを猶予し、特許切れ後は猶予分を引き下げるという内容だ。

 予想以上の進展である。率直に評価したい。

 肝心なのはここからだ。医薬産業政策の要件である予算の獲得、税、薬価、薬事の制度改革を具体化する段階に入る。いかに実のあるものにしていくかが問われる。

 今後は、医療関係団体、支払い側、財政当局など手強いプレーヤーも交渉相手になる。一連の提案や要求の実現には、官民双方に相手を見極めた柔軟な戦術が求められよう。

 業界が関心を寄せているのは、論争もあって、展開が読みづらい薬価制度、税制改革。その中で業界、厚労省のコントロールが効きやすい薬価制度改革でいえば、気になるところがある。

 一つは、来年度に向けた加算率の引き上げなどの提案と、中長期的に導入を求める新制度の提案のつながりが不明確なことだ。日薬連は来年度改革が第一歩と言うが、厚労省はそう理解していない。関心が来年度改革に向きがちな中で、このままでは新制度案は置き去りになる。イノベーションによる経済成長路線にある今こそ、実現へ道筋をつける議題設定が求められる。

 新薬の薬価を高めるための財源は、長期収載品から安価な後発品への置き換えを促すことで捻出する概念になろうが、その道筋が明確ではないのも気にかかる。医療保険財政を気にする財政当局は、後発品の使用促進に道筋がつかない限り、新薬の評価を高めようとは思わないだろう。

 その点、社会保障関係予算の削減に、後発品の使用促進による財政効果を織り込む動きがあることに注目したい。実際に後発品が広く使われるか否かは読みにくく、織り込むなら、財政当局は確実に使用が促進される相応の施策を求めてくるはず。経営に大きな影響が出る企業もあるかもしれない。この動きへの対応は行政に委ねるだけでなく、業界を挙げての検討、働きかけをすべきではないか。

 それから新制度案から消えた「財政中立」の考えは、一考の価値があると考える。財政中立論は将来に制約をもたらす懸念はある。より良い医療には費用はかかり、医療(薬剤)費に枠がはめられては、良い医療の提供を阻害しかねないという懸念も分かる。医療費削減のターゲットにされてきた過去からすれば,業界がそう警戒するのは無理からぬことだが、財政当局、支払い側も医療費増を警戒している。双方に歩み寄る戦術が必要だ。

 財政中立を宣言することが、薬剤費支出の結果まで縛り得るのかどうか。シーリングは、あくまで要求の上限に過ぎないとの割り切った考えがあっていいのかもしれない。

 年末の予算編成に向け、利害関係者のつばぜり合いは激しさを増す。業界側は覚悟をもって臨みたい。




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