厚生労働省は、特定の医療機関からの処方箋集中率が高い、いわゆる門前薬局から地域のかかりつけ薬局への移行を推進するため、調剤報酬を抜本的に見直す方針を打ち出した。
厚労省は、今月21日の規制改革会議の健康・医療ワーキンググループに、▽在宅での服薬管理・指導や24時間対応▽かかりつけ医と連携した服薬管理▽処方薬の一元的・継続的管理▽薬剤師の専門性を生かした後発品の使用促進――に対する評価を手厚くする一方で、「いわゆる門前薬局に対する評価の見直し」を今後、複数回の調剤報酬改定を通じて進めていく方向性を示した。
26日の経済財政諮問会議では、塩崎厚労相が「患者のための薬局ビジョン」の策定に入り、年内に公表することを説明。
「立地から機能へ」「薬中心から患者中心へ」「バラバラからひとつへ」をテーマとし、「24時間・在宅対応」「服薬指導」「処方提案」「情報の一元管理」「残薬解消」「重複投薬防止」などに取り組み、「医薬分業の原点に立ち返り、全ての薬局を患者本位のかかりつけ薬局に再編する」と説明した。
構造規制についても、薬局全体のあり方を見直していく中で、議論が進められることになりそうだ。
注目したいのは、「かかりつけ医と連携した服薬管理」である。塩崎厚労相が諮問会議に提示した資料では、かかりつけ医について、「2016年度の改定でさらなる評価を検討」と明記している。かかりつけ医とかかりつけ薬局が患者の服薬情報を共有できれば、これまで以上に服用する薬の種類や残薬を減らすことにつながるかもしれない。
ただ、地域の医療提供体制が大きく見直されようとしている中で、薬局ビジョン策定の論点として挙がっている残薬解消や服薬情報の一元管理などは、「やっていて当たり前」という印象が拭えない。
医薬分業が歪んでしまったのは、分業を急速に進めようとして国が保険点数で誘導したから、という見方もあるが、「医薬分業の原点に立ち返り、かかりつけ薬局を推進」と言われてしまっては、「これまで薬局は何をしてきたのか」と思われても仕方がない。
医療現場での実績をもとに「病棟薬剤業務実施加算」や「がん患者指導管理料」を勝ち取っていった病院薬剤師と比べるつもりはないが、改定のたびに厚労省が運んでくれる餌を、おいしければ食べるし、まずければ食べない、というスタイルからは完全に脱却する必要があるだろう。
過去に調剤報酬改定を担当したことのある厚労省幹部は、「実績が伴っていないのに点数だけ先に付けてあげると、上滑りしてしまう」と、先に点数をつけて誘導することの危うさを指摘していた。
“患者のためにこういう取り組みをしたいが、ある問題があってできない。だから行政に何とかしてもらいたい”といったように、「現場からふつふつと沸き起こったもの」でなければ定着していかないそうだ。次期改定では、薬局ならではの提案や、実績に基づいた加算がいくつあるかについても着目したい。