これまでの診療報酬上のインセンティブを付与した後発品使用促進という悠長な状況ではない議論が、このところ活発化している。50%を超えて推移する後発品の数量ベースのシェア目標値の設定に関してである。
先月26日に開かれた経済財政諮問会議で塩崎恭久厚労相は、後発品の数量シェアを2020年度末に80%以上とする新目標値を示した。2年前に策定された「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」では17年度末に60%という目標が設定されている中で、後発メーカーからは既に「時間の猶予が必要」との声も聞かれる。
一方で、財務省の諮問機関である財政制度等審議会では、20年度までの財政健全化に向けた報告書の中で、社会保障費の伸びを年0・5兆円に抑えるよう提言。その具体策の一つとして、後発品数量シェアを、現行のロードマップの17年度末60%を80%以上に引き上げる目標を設定し、措置をとるよう求めている。
この猶予のない、数量ベース引き上げ議論は、医薬品業界にも影響をもたらした。
経済諮問会議での発表の翌日には、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、日本ジェネリック製薬協会の3団体は「薬剤費の抑制を念頭においた性急な議論が進行している」とする共同声明を発表。その中で、製薬企業の健全な発展への配慮を求めるなど、先発、後発の各医薬品団体が協調する形で異例の対応を示した。
新薬メーカーは、使用促進策による後発品への切り替えの影響を受け長期収載品目などの国内売上高が低迷。一方、後発メーカーは安定供給へ向けた増産体制への設備投資をロードマップを指標に進めている段階だ。数量ベースの目標値の急な引き上げは、双方ともに企業体力を一気に消耗しかねない。『極めて大きな危惧の念を抱かざるを得ない』共通認識となったということだ。
ところで、“20年80%以上”の新目標を達成した場合の医療費削減効果は1・3兆円と試算されている。実は07年10月に策定された「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」で後発品使用促進がスタートした当時の財政制度等審議会資料でも、後発品のある先発品を全て後発品に切り替えた場合の削減効果額も1・3兆円と同じ数値が示されている。
試算数値が一人歩きしているとまで言わないが、07年から8年が経過しようとしている中で、後発品の使用促進による対医療費削減効果額は、国としての検証結果は未だ一度も報告されていない。実態がつかみにくい部分もあるのかもしれない。やはり、医療費抑制は喫緊の課題だが、数量ベース目標値の根拠も含めて、後発品使用に伴う医療費削減効果については国民が納得できる数値として示す時期に来ているのではないか。