後発品の一層の使用促進策が様々な場面で検討されている。厚生労働省は、新たに2020年度に数量割合80%の目標を打ち出し、ロードマップを見直す方針を表明したが、財政当局等は欧米に比べてまだ日本の数量割合が少ないとして、さらなる達成時期の前倒しを求めている。
数量割合80%の達成に向けては課題もある。厚労省と業界団体の日本ジェネリック製薬協会は、急進的な目標に難色を示しており、「供給体制が整わなければできない」と5年程度の時間的猶予を求めている。また、後発品の使用促進をめぐる議論を通じ、先発品メーカーの事業構造にもメスが入る可能性がある。
既に政府の関連会議では「長期収載品に収益を頼る構造は本末転倒」と厳しい意見が出ている。日本製薬工業協会は「ビジネスモデルを転換している最中に方針を急に変えられると、うまく適合できず経営が苦しくなるところが出てくるかもしれない」と時間的猶予を求めているが、一層の使用促進策を議論する上で、先発品メーカーも長期収載品に頼らない経営構造が厳しく問われてくるだろう。
2010年に「新薬創出等加算」が導入された当時、長期収載品の占める割合が大きい国内中堅メーカーに厳しい制度で、新薬からの撤退や後発品への参入も含め、生き残りをかけた経営戦略が問われると言われたが、再編の機運は高まらなかった。それが一変したのは14年度の薬価制度改革で、後発品に置き換えられていない長期収載品の特例引き下げが導入され、後発品の浸透スピードは一気に加速。長期収載品の依存度が高い先発品メーカーの業績を直撃した。一方、小規模乱立する後発品メーカーも、数量割合引き上げの議論が浮上したことで、供給体制の問題が再燃。安定的な供給に向け、スケールメリットを生かす業界再編が必要との機運が高まってくる可能性がある。
これから後発品が8割を占める国内市場ができるとすれば、長期収載品に依存した先発品メーカーの経営が長続きせず、スケールメリットを生かせない後発品メーカーでは今後の増産体制やバイオ後続品時代に対応できないのは明白。既に後発品の急速な浸透が先発品メーカーの業績に大きな影響を与えていることを考えると、遅かれ早かれ重大な経営判断を迫られることになるだろう。
アステラス製薬、第一三共、大日本住友製薬、あすか製薬、田辺三菱製薬、協和発酵キリンの誕生以来、大きな再編の動きがなかった日本でも、後発品の使用促進策が新たな再編の号砲を鳴らすきっかけになるかもしれない。追い風を受ける後発品メーカーも、今後はますます体力勝負になるだけに再編は必至だ。
世界を見れば激しい勢いで事業交換や買収劇が繰り返され、業界地図が変貌した。こうした動きに日本だけ無縁のはずはなく、国の政策を見て行動を起こす内向きな対応ではグローバルの荒波は乗り切れない。今こそ、自らビジョンを描いて先手を打ち、国の政策にも合致したビジネスをリードしていくような積極的な経営戦略が求められているのではないか。