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2つのウイルスを克服できるのか

2015年6月19日 (金)

 人類の歴史は細菌・ウイルスとの闘いの連続だ。科学が発達して原因が分かるようになってからは、治療薬やワクチンでかろうじて抑え込み勝利をつかんできた。それまでに失われた膨大な人命と引き換えにしてだが。

 しかし、この21世紀においても打つ手立てがない相手もいるし、毎年のように新手のウイルスが確認されているのが現状だ。コレラ、ペスト、結核、ポリオなどの感染症は、ある程度医療が整っている社会ではほぼ克服されていると言えるが、RNA系レトロウイルスのHIV(エイズ)、エボラ、太陽のようなコロナウイルスのSARS、MERSなどにはシャレではなく本当に手を焼いている状況だ。

 共通しているのは、伝播防止の不備である。孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」のとおり、相手を知らなければ戦いようが分からない。まずは、奴らの戦法である感染拡大を阻止することこそが最優先だ。

 韓国の感染状況は、隔離対象者が6500人を超え、確定感染者は160人以上、死者はついに20人を突破した。このような事態を受けて日本では、「第1回中東呼吸器症候群(MERS)対策に関する専門家会議」を9日に開催し、国内感染が確認された場合の対応を話し合った。翌10日には会議での内容を踏まえた対応策について、全国の衛生主管部局長宛に厚生労働省健康局結核感染症課長通知を発出した。

 内容は、[1]感染症指定医療機関への入院措置などMERS患者からの二次感染が疑われる者への対応[2]長距離移動の患者負担と感染拡大リスク軽減のため、各都道府県内で医療機関を事前に確保して入院医療体制を完結する医療提供体制[3]地方衛研と国立感染症研のダブルPCR検査による早期検査結果の確定、厚労省と都道府県の双方による情報公表とする対応フローの一部変更――の3点である。他の感染症同様、事前の準備を怠らないことが肝要だ。

 感染症は途上国で特に深刻だが、もう一つのウイルスは先進国の情報社会における脅威であり、新たな闘いが既に始まっている。このウイルスは、高度な医学・医術・医療をもってしても全く対処できない代物で、何と人類自らがつくったのだからジョークにもならない愚行だ。

 厚労省の発表によれば、11日に国立医薬品食品衛生研究所、国立精神・神経医療研究センター、健康保険組合連合会の端末が、ウイルスを含む悪意のあるソフトウェアである「マルウェア」に感染・感染疑いが判明したため、外部とのネットワーク接続を遮断した。外部流出個人情報約125万件とされる日本年金機構へのウイルスによる不正アクセスに続き、またしても感染を許してしまった。

 こっちのウイルスは立派な犯罪であり、テロ行為でもある。事実関係と原因解明が早期に行われ、強力な対策が打ち出されることを期待する。




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