厚生労働省の「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」で、地域住民の健康支援に取り組む薬局の基準作りに向けた議論が進められている。その定義については、かかりつけ薬局の基本的な機能に上乗せする形で、一般薬の適正使用に関する助言、健康に関する地域住民からの相談を幅広く受け付けるなどの「健康サポート機能」を備える方向で概ね一致。
厚労省は、この薬局の要件を設定する際に検討する項目として、一般薬の取り扱い品目数や個人情報に配慮した相談スペースの確保、土日祝日の開局、多職種や関係機関(医療機関、行政機関など)との連携など八つの項目を挙げている。
また、「患者のファーストアクセスは薬局ではなく、かかりつけ医」という考えのもと、仮称であってもファーストアクセスの場といったイメージを持たせる「拠点」を名称に用いることに難色を示していた日本医師会の委員に配慮し、暫定的に「健康づくり支援薬局」との名称を用いることにもなった。
健康情報拠点事業に後ろ向きな日医の委員からは、「患者と薬剤師が顔の見える関係になっていない中、薬局が健康情報拠点になり得るのか」といった厳しい意見が出ているほか、「商売目的にすべきではない」など、健康支援薬局の要件をクリアすることで“儲け”につなげようとする動きもけん制している。
とりわけ印象に残っているのは、ある委員からの「健康情報拠点で薬局は何をしたらいいのか」という問いに対して、厚労省が「地域の特性を踏まえて、必要な機能を備えてもらいたい」と応じたやりとりである。
かかりつけ薬局が備えるべき機能や、それを踏まえた上での健康支援薬局の要件はどうあるべきかなど、議論が多岐にわたったため、多少の混乱があったのかもしれないが、この発言こそが、多くの薬局が医薬分業の理念を置き去りにしてきたことによるものと考えられるからだ。
これまで多くの薬局は、医師の出す処方箋を受け付けて、間違いなく薬を出すということを最終目的に据え、尽力してきた。いまでも、そうしている薬局は少なくない。
しかし、患者が望んでいるのは、「薬をもらう」ことではなく、もらった薬を適正に使用して「健康になる」ことではないのか。「患者が健康になる」ことが最終目的になれば、薬は調剤して患者に渡した後が重要になることは言うまでもない。本来ならば、一歩踏み込んだ対応を行う必要があったのだ。残薬や重複投薬の問題が大きくクローズアップされているが、裏を返せば薬を出すことを最終目的にしていた薬局がいかに多かったかということである。
医薬分業をめぐっては、薬局のサービスがコストに見合っていないといった意見が出ているが、国民の大半がメリットを見出せないのは当然の結果だ。
国が進める“かかりつけ薬局普及”の方針と併せて、地域住民に健康アドバイスをする身近な医療人としての姿を取り戻してほしい。