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危険ドラッグは終息したが

2015年7月3日 (金)

 危険ドラッグの新規使用者は激減したようだ。

 薬物依存症患者の治療や回復支援に取り組んでいる埼玉県立精神医療センターの成瀬暢也氏は先月、大阪市で開かれた日本精神神経学会学術総会で、危険ドラッグを使用した新規外来患者の推移を報告。昨年夏頃は月間50人を超えていた患者は11月以降激減し、今年春頃にはほぼゼロになったと語った。神奈川県立精神医療センターの小林桜児氏も、昨年8月をピークに現在は激減し、月間数人にとどまっていると報告した。

 法規制の整備と取り締まりの強化が、新規使用者の激減に奏功した。昨年4月から、厚生労働大臣が指定した薬物の輸入、製造、販売に加えて、所持、使用、購入、譲受が新たに禁止された。昨年12月からは、医薬品医療機器等法(薬機法)の改正が施行され、「指定薬物と同等以上に精神毒性を有する蓋然性が高い物である疑いがある物品」も規制対象になり、検査命令、販売・広告の停止命令を出せるようになった。このほか約半数の都道府県で危険ドラッグに関する条令が整備された。

 所持者、使用者も逮捕されるようになり、「危険ドラッグは捕まる」という認識が広まった。販売側も堂々と売れなくなった。その結果、新規使用者は激減。水面下での取引は残っているが、危険ドラッグ問題はほぼ終息したといえる。

 しかし、ここで思考停止になってはいけない。危険ドラッグの使用者は激減したが、何らかの物質や行動に依存せざるを得ない依存症患者が減ったわけではないからだ。危険ドラッグ使用者は現在、依存の対象をアルコールや医療用医薬品、ギャンブルなどに移しているという。薬剤師の視点からは、医療用医薬品の乱用を防止する関わりが今まで以上に求められる。

 さらに重要なのは、防ぐだけではなく、依存症患者を支える仕組みの構築だ。

 同学術総会で成瀬氏は「危険ドラッグ問題に日本は取り締まり一辺倒で対処してきた。多くの先進国では治療や回復支援が主体だが、日本は未だに厳罰主義で対処している。法で取り締まらなければ、あっという間に広がることを危険ドラッグ問題は示してくれた」と指摘。薬物依存症患者を専門的に治療する病院は全国に十数施設と少なく、全国の精神科病院で「他の精神疾患と同じように当たり前に薬物依存症患者を治療する形にならなければ問題は解決しない」と呼びかけた。

 依存症は誰もが患うものではなく、親からの暴力や過干渉、親の酒乱や賭博、性被害などを背景に、安心できる環境で育つことができず、他者から安心感を得られずに1人で対処せざるを得なかった人が陥りやすいという。生きづらさを抱えずに済む社会をどう作るのか、生きづらさを抱えた人をどう支えるかが本質的な課題だ。危険ドラッグ問題を、その解決策を考える契機にしたい。




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