日本製薬工業協会会長 多田正世
昨年は、6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太方針)において、後発医薬品の数量目標の設定や使用促進と併せて、成長戦略に資する創薬に係るイノベーションの推進が盛り込まれ、9月には、それを具体化するための施策として、厚生労働省により「医薬品産業強化総合戦略」が取りまとめられました。
総合戦略では、創薬に係るイノベーションを適切に評価すること、またその予見性が確保されることが重要と示されており、産業界としても、適正に評価された収益によりイノベーションサイクルを回していくことに総力を挙げる所存です。
今年も、日本製薬工業協会として取り組むべき事項は多岐にわたりますが、特に注力すべき事項として、▽革新的な新薬の研究開発の促進▽国際展開の推進とグローバルヘルスへの貢献▽コンプライアンスのさらなる徹底と国民の信頼感の一層の醸成▽イノベーションの適正な評価など産業理解の一層の推進――の四つを掲げています。これらの課題解決を進めることが、研究開発型製薬企業の使命である創薬の活性化につながり、革新的新薬の開発やアンメット・メディカル・ニーズへのさらなる対応といった形で、わが国の医療の質の向上と経済発展に寄与していくと思います。
昨年4月、日本医療研究開発機構(AMED)が設立され、創薬支援ネットワークの活動がより一層活性化されており、日本のアカデミアの優れた基礎研究から生み出される創薬シーズに大いに期待しております。製薬協は、AMEDはじめ政府の取り組みを引き続き支持し、グローバル展開可能な革新的医薬品の創出に向けて全力を尽くし、産学官のさらなる連携強化を図っていきます。
昨年末、北里大学の大村智特別栄誉教授がノーベル生理・医学賞を受賞されました。新薬開発にかける情熱とグローバルヘルスへの貢献に対し、われわれ研究開発型製薬企業は、一層の奮起を促されています。
製薬協会員企業の使命は、「革新的で有用性の高い新薬を創出し、一日でも早く、わが国のみならず、世界の人々の健康と福祉の向上に貢献する」ことです。そして、その結果として日本の経済成長に寄与していきたいと考えています。