“知恵”身に付け社会で活躍を
薬剤師国家試験予備校のメディセレは薬剤師の生涯教育にも力を入れている。国試合格だけを目指すのではなく、資格取得後には社会で薬剤師として活躍して欲しいという思いがあるからだ。2010年以降「次世代の薬剤師を創る会」と題した勉強会を定期的に開き、社会で活躍するために必要な“知恵”を身に付ける機会を提供してきた。このほか、心理学と薬学を融合し薬の知識を持った心理カウンセラーを養成するユニークな講座を設置するなど、様々な角度から薬剤師の教育に取り組んでいる。
同社は、日本薬剤師研修センターの研修プロバイダーの認証を09年に取得。10年度から「次世代の薬剤師を創る会」を開始した。東京、大阪、名古屋の各拠点で年間約3回のペースでこれまでに19回の勉強会を開催。各回100人の受講者枠はほぼ満員だ。
毎回設定されたテーマに沿って約90分間、講師の講演を聴くほか、数人の薬剤師らが演壇で発表する「一般口頭発表」の場を設置。講演や発表後には十分な時間を割き、何でも話せる雰囲気のもと受講者による意見交換を促している。
自身も薬剤師資格を持つメディセレ社長の児島惠美子氏は勉強会を通じて「薬剤師には、社会で活躍するための知恵を身に付けて欲しいし、自身のキャリアを深く考えて欲しい。悩みや解決法も共有してもらいたい」と語る。
一方、薬の知識を持った心理カウンセラーの養成を目指した講座を09年から開講している。コースは初級、中級、医療心理の3つ。講義に加え、学んだ知識が身に付くようにロールプレイによる実技にも多くの時間を割くことが特徴。試験合格者はNPO法人「医療心理学協会」の認定資格を取得可能だ。
13年度に改定された薬学教育モデル・コアカリキュラムの薬学準備教育ガイドラインの中に「人の行動と心理」という項目が盛り込まれるなど、薬剤師が備えるべき能力として心理学は注目されている。「心理学に基づくカウンセリング能力を薬剤師が持つと様々なことが可能になる。例えば、精神科患者に対しても自信をもって接することができる」と児島氏。薬局の健康教室に参加する地域住民や、高齢者施設の入居者を対象にストレス発散法を教えるなど、コミュニケーションのきっかけづくりとしても役立つという。
同社はこのほか、東京大学大学院薬学研究科医薬品情報学講座との連携を強めている。同講座が現場の薬剤師を対象に全国4カ所で開催する「リアル育薬セミナー」の大阪会場を担当。さらに同講座と連携し、薬剤師の教育にも活用できる教材の開発にも乗り出した。
この教材は「薬を学ぶ」と題し、ある一つの薬剤を取り上げて構造式や保管方法、処方までを網羅的に解説するもの。国家試験の複合問題攻略に活用できるほか、ブランクが空いた薬剤師の学び直しにも使える。第1弾は抗がん剤のフルオロウラシル(5-FU)を取り上げ、7月下旬に1000部を無料で発刊する。読者の感想をもとに内容を練り上げ、シリーズで本格的に出版する計画だ。

東京大学との共同研究の一環として実施したワークショップ
同講座との共同研究も15年から開始した。その一つとしてこのほど薬学生を集めてワークショップを開催。薬学教育で何を学びたいのか、意識調査を行った。研究成果は医薬品適正使用を習得する教育用コンテンツの作成に活用される予定だ。
本体の予備校経営は07年の創業以降右肩上がりで成長。大阪から始まったスクールの拠点は、昨年12月に開設した仙台校を加え全国6カ所に拡大した。10年目を迎えた今、「教育とは共に育つこと、つまり共育です。勉強会にも1期生が参加してくれている。教えるだけでなく、教えてもらうこともたくさんある。共に育っていく場づくりを今後も続けていきたい」と児島氏は話す。
Medisere
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