南米初となるリオデジャネイロオリンピックが開幕し、日本勢の活躍などで盛り上がりを見せているが、熱戦もいよいよ最終盤を迎えた。
今回は、開催国であるブラジル国内の混乱や治安が懸念されていたが、それ以上に大きな話題をさらったのがロシアの国ぐるみでのドーピング問題である。
国際オリンピック委員会(IOC)は、ロシア選手団の100人以上の選手を失格としたが、271人の出場を条件付きで認めた。これに対して、ロシア選手団全体の五輪参加を拒否すべきと勧告していた世界反ドーピング機関(WADA)は、IOCの決定に失望を表明した。
早速、WADAの懸念が五輪開催中に現実のものとなった。スポーツ仲裁裁判所(CAS)の反ドーピング部門は、リオ五輪に出場予定だった重量挙げ男子94キロ級のポーランド選手、陸上女子3000メートル障害のブルガリア選手をドーピング違反で五輪から追放すると発表。検査に陽性反応を示した競泳女子100メートルバタフライ4位の中国選手を暫定資格停止とする処分を下した。さらにIOCは、2008年の北京五輪で金メダルを獲得したロシアの女子陸上選手をドーピング再検査で失格処分にしたニュースも飛び込んできた。
これだけドーピング問題が大きな注目を浴びている五輪にもかかわらず、相次いでドーピング違反が発覚している状況は深刻である。予想以上に薬物汚染が浸透していることがうかがえ、世界的に蔓延するドーピング問題の根深さを示したとも言えるだろう。
競泳の中国選手から検出された薬物は、利尿薬の一つであるヒドロクロロチアジド。身体能力の向上はあまり期待できないとされ、一般的に高血圧の治療などに広く使われている薬でもある。今回どのような目的で使用したのか不明だが、一方でヒドロクロロチアジドは身体能力の向上を意図しない「うっかりドーピング」での事例も報告されている。実際、ドーピング違反の物質が含まれる一般用医薬品のかぜ薬を服用してしまったような事例は少なくない。
それだけに、アスリートの身近な薬の相談相手となり、ドーピングやうっかりドーピングを防ぐスポーツファーマシストの役割は重要さを増している。特に日本は、次回20年東京五輪の開催国であり、ドーピングへの毅然とした対応が求められるのは必至だ。
こうした中、既に和歌山県薬剤師会は14年度から、国体開催をきっかけに出場40競技団体の全てに専属スポーツファーマシストを配置する取り組みを行っている。十分な薬の知識を持っていない選手のフェアプレーを支援するため、監督やコーチを介したり、選手本人から直接相談を受ける体制作りなど、薬剤師が全競技団体の選手の服薬に目を光らせることは、ドーピング防止の大きな力となる。4年後の東京五輪の自国開催に向け、日本から反ドーピング活動の取り組みを積極的に発信したい。