保科清(山王病院小児科部長・日本小児科医会会長)
少子化歯止め対策根本から
どんなに少子化が問題だと騒いでみても、少子化の進行はとどまるところをしりません。 少子化が進行したら、どのような問題が起きてくるのか、考えたことありますか。必ず出てくるのが、年金問題です。しかし、年金はお年寄りの問題で、出産する年代の人たちからみれば白けた問題です。
子どもが少なくなれば、若い人たちも次第に減少することになり、働いてくれる生産人口も減少しますので、結果として労働力をどう確保するかの方が問題です。
少し不景気になれば、リストラなどで労働者数を削減して、一人の仕事を増やすことにより人件費を削減しようとします。リストラができなければ、工場を開発途上国のように人件費や物価の安いところで生産するようになります。工場などを開発途上国に持っていけないような業種は、逆に他の国の労働力を日本に連れてきます。皆さんの周りにも、いろいろな職場で働いている外国人をよく見かけるでしょう。
アメリカで少子化が進まないのは、移民を受け入れてきたためではないかと私は思っています。日本でも、その内に海外からの労働力を多く受け入れざるを得なくなるでしょう。お巡りさんも外国人になるかもしれません。
女性が生涯に産む子どもの数を示した合計特殊出生率は1.27となりました。現在の日本の人口を維持するために必要な合計特殊出生率は2.08といわれますが、はるかに少ない数です。昨年から、人口は減少し始めました。
どうすれば少子化は止まるのでしょうか。簡単に答えが出せるなら、少子化は進行しません。それでも個人的な意見をいえば、仕事をしている女性が出産育児で仕事を辞めなくてよい、キャリアを積みたい女性が出産育児後も継続してキャリアを積み上げることができる社会環境を作れば、女性も安心して出産育児をしてくれるでしょう。
さらに、専業主婦の女性に対して、お子さんひとりについて月4万円程度の育児資金を出すべきです。保育園に預けて働いている女性には、給料も出ているし、保育園に対してお子さん一人に5万円近くの補助金が自治体から出ているのですから。
老人は1票を持っていますが、子どもは持っていません。投票してもらえる老人政策を出さないと、選挙に勝てないので老人を大事にします。赤ちゃんの泣き声を騒音と感じる老人も増えています。これでは少子化が止まりません。
代議士たるもの、国の今後を見据えた政策で国政に挑んでもらいたいものです。
※保科清先生は6月10日の日本小児科医会総会で会長に就任しました。