星恵子(昭和薬科大学 薬物治療学教授)
学生の時から交流が必要に
薬学教育6年制が目指すのは、臨床薬学を充実させて、医療現場でこれまで以上に薬剤師としての専門性を発揮できる人材の育成です。それに向けて、最も大切なことは、やはり教育です。
日本薬学会は、5つのコース(A:ヒューマニズムを学ぶ、B:イントロダクション〔薬学への招待、早期体験学習〕、C:薬学専門教育、D:実務実習教育、E:卒業実習教育)からなる薬学教育モデル・コアカリキュラムを作成し、各大学は、これを基にカリキュラムを編成します。加えて、特色ある大学にするため、それぞれ独自にカリキュラムに工夫をこらします。
薬学教育に携わる者は微に入り細に入り考え、意気込んで教育し卒業させますが、果たして薬剤師が提案する薬や処方を、医師が素直に受け入れてくれるでしょうか。現状では疑問に思います。
それでは、どうしたらよいか。それは、信頼関係の構築に尽きると思います。患者と医師との信頼関係云々といわれるように、医療には信頼関係が不可欠です。しかしながら、薬について全面的に薬剤師に任せられるほど、薬剤師と医師との信頼関係はなく、6年制で期待される薬剤師像は望めません。
信頼関係を早期に構築するには、医療分野で学ぶ学生同士が積極的に交流し、意見を交わすことに慣れることが、とても重要と思います。学生の時にお互いの存在を知り親しんでおけば、将来、双方とも気楽に意見が交わせて、また、相手の意見を素直に受け入れられる素地が自然にできると思います。幸い、“ヒューマニズムを学ぶ”など、医療人としての倫理感を養う共通のテーマもあります。“鉄は熱いうちに打て”といいますが、卒業してそれぞれ専門性を持った後では遅すぎます。
好例ではありませんが、夫婦関係が似ています。エィ・ヤァーで結婚しますが、育った環境の違いから、価値観も異なります。そこから、意見の食い違いが生じ、それを乗り越えるのは容易ではありません。勿論、別々に育ったからこそ、よい面もありますが・・・。
医療人として働くもの同士が、“お互いひよこの時”に、たとえ短い時間であっても共に教育を受ければ、親しみも湧き信頼関係の構築も早いと思います。それは結果として、素晴らしい医療に結びつくはずです。