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【2016年回顧と展望】医薬品の流通改善へ向けて持続的な取り組みを‐薬卸連専務理事

2016年12月27日 (火)

日本医薬品卸売業連合会専務理事 山田耕蔵

山田耕蔵氏

 医薬品卸売業界の1年を振り返りつつ、現下の医薬品流通に関する状況についてご紹介したい。

薬卸連創立75周年

 今年は、薬卸連創立75周年に当たり、11月の薬卸連セミナーにおいて記念座談会を開催した。厚生労働省の武田医薬・生活衛生局長、エーザイの内藤代表執行役CEO、薬卸連の別所顧問(前会長)、松谷顧問(元会長)にご出席いただいた。クレコンリサーチ&コンサルティングの木村会長の司会のもと、これまでの薬卸連の歴史を振り返りつつ、将来の展望を語っていただいた。「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(流改懇)の座長をされている青山学院大学の三村教授には記念講演をしていただいた。

 また、この記念すべき年に薬卸連は厚生労働大臣表彰(薬事功労)を受賞した。これは、会員構成員会社が長年にわたり流通を通じて医薬品の適切かつ安定的な供給などに尽力されてきたことが評価されたものである。

IFPW

 9月15、16の両日、IFPW(国際医薬品連盟)の総会がロンドンで開催された。

 開催国の英国をはじめ25カ国・250人の参加を得て、「ヘルスケアサービスの発展と将来展望」をテーマに熱心な議論が行われた。ジェネリック・バイオシミラーの市場拡大への対応、テクノロジーの進歩がヘルスケアに与える影響などについて大きな関心が集まった。総会期間中には日本と中国、韓国の代表者との会談も行われ、次回のアジア・パシフィック医薬品流通フォーラムを17年の5月に上海で開催する方向で検討を進めることとされた。総会の最後には、次回18年のIFPW総会が、米国・ワシントンで開催されるとの報告があった。

 総会に先立つ理事会において、薬卸連の鈴木会長がIFPWの副会長に選任された。これに伴い、20年のIFPW総会は日本で開催される方向となった。今後、日本のどの都市で開催するかをまず決めた上で、諸般の準備に取りかかることとしている。

流通改善への取り組み

 昨年、流改懇において「医療用医薬品の流通改善の促進について(提言)」(新提言)が取りまとめられた。これを受けて、薬卸連では今年に入ってすぐに「新提言等フォローアップタスクフォース」を設置し、新提言に盛り込まれた取り組むべき事項の実現に向けて積極的な取り組みを開始した。

 7月には、その取り組みの一環として、「医療用医薬品の流通改善」のポスターを作成し、会員卸企業の全ての事業所に掲示いただき、主要な四つの課題、▽単品単価交渉の推進▽覚書締結の促進▽持続可能な後発医薬品の流通の実現▽本体価格(税抜価格)での交渉――について、業界一丸となっての取り組みをお願いした。8月から9月にかけては、当該ポスターに掲げた流通改善を円滑に進めるため、薬卸連の正副会長を先頭に公的医療機関本部等を訪問し、ご理解、ご協力の要請をさせていただいた。

 これまでのところ、タスクフォースでは、単品単価取引の具体的推進方策、市場環境の急激な変化に対応して、個々の医薬品ごとに流通コストが賄え適正な利益が確保できる仕組みなどについて、検討を行っている。

薬価の毎年改定

 11月25日の経済財政諮問会議において、民間議員から「薬価改定は通常2年に1回であるが、国が毎年調査することで流通価格の下落情勢を毎年度予算に適切に反映する毎年改定の仕組みとし、国民負担を軽減すべき」との資料が提出された。総理からは「民間議員の提案も踏まえ、薬価制度の抜本的改革に向けて、諮問会議で議論し、年内に基本方針を取りまとめていただきたい」との指示が出され、医薬品関係業界に激震が走った。

 薬卸連は12月2日に「薬価を毎年改定することについては断固反対します」との声明を発表し、9日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会の業界ヒアリングにおいても、その旨強く主張した。

 薬価の毎年改定については、問題点が多々あるが、前述した流通改善への取り組みが後退しかねないというのも大きな問題点である。仮に毎年改定になれば、従来に増して厳しい価格交渉になると見込まれ、毎年9月までの短期間でこれを行うとなると、単品単価取引が後退するなど、流通改善に逆行しかねない。卸の価格交渉が年中行事化し、MSの情報収集・提供などの本来業務に支障をきたし、ひいては災害時やパンデミック時における安定供給にも大きな影響が出ることが懸念される。

 12月7日の経済財政諮問会議の民間議員ペーパーでは、「卸売業者による安定的な供給機能の確保のため、流通の効率化を進めると共に、安定的に一定の利益が確保されるよう公正取引の推進、市場環境に伴う収益構造への適切な対処を進めること」「適切な価格形成を図るため、単品単価取引の徹底、早期妥結の促進を図ること」という提案がなされている。

 提案の具体的内容は明確でないが、薬価の毎年改定を論ずる際には、医薬品の流通や安定供給にも十分配慮が必要なことは言うまでもない。いずれにせよ17年は正念場の年になるのではないかと考えている。



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