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ロシュ・ダイアグノスティックスは、今年からマイクロアレイビジネスに本格参入し、新たな市場拡大に攻勢をかける。研究用試薬・機器を扱うAS事業部長の小笠原信氏は、本紙の取材に「大きな成長が見込めるゲノミクス分野とサイトミクス(細胞工学)分野に資本投下を集中し、5年後には売上高100億円を目指す」との考えを明らかにした。来年までの2年間は、マイクロアレイ、シークエンサー、リアルタイムPCRの3点セットを強力にアピールし、ゲノミクス分野のシェア拡大戦略を展開していく予定だ。
マイクロアレイの市場規模は、マイクロアレイ、シークエンサー、受託解析を合わせて約1500億円、日本で約120億円と見られている。マイクロアレイの使用枚数は、3年前と比べて10倍以上に急増したが、それに伴い単価が急落したため、市場全体の成長は10%程度にとどまっている。ただ、マイクロアレイの市場自体は成長分野として注目度が高く、今後の焦点は、研究用途から臨床の診断に活用できるかに移ってきている。
最大シェアを誇るのが、米アフィメトリクスだ。次いで米アジレント、米ニンブルジェン、米イルミナと、これら4社で日本のマイクロアレイ市場の90%以上を占める。
こうした中で、ロシュは昨年、巨額の投資を行い、ニンブルジェン、454ライフサイエンス、ベンタナと米企業を相次いで買収。成長著しいマイクロアレイビジネスに参入する方向性を打ち出した。小笠原氏は「既に研究所で一般的に使われている試薬は、市場が飽和状態にあるので、新しい技術を使った成長分野で画期的な製品を出していかなければ、なかなか大きな成長は見込めない」と背景を説明する。
買収の目的は、ニンブルジェンのマイクロアレイ、454ライフサイエンスのシークエンサー、自社のRT‐PCRとラインナップを揃えること。遺伝子発現を調べ、網羅的に解析し、定量を可能にする製品を全て手に入れたことで、研究者を総合的に支援する体制が整った。
小笠原氏は「両社の技術だけでなく、製品特徴を生かしながら新製品を生み出せるメリットもある」と指摘。「今年と来年は、ゲノミクスに集中してビジネスを展開していく」と意気込みを示す。既に、両社の技術を生かしたシークエンスキャプチャーアレイ(DNA濃縮アレイ)の新製品を開発中で、今年後半には市場に投入する予定だ。
さらに、ロシュは昨年、米ACEAバイオサイエンスと提携。リアルタイム細胞分析技術に関する独占契約を締結し、サイトミクス分野の強化にも乗り出した。ACEAのリアルタイム細胞分析システムは、細胞の活性を視覚的に解析できる画期的な装置で、小笠原氏は「サイトミクス分野でも、ロシュとACEAの共同開発による新製品を今年後半から投入していく」との方針を示している。
サイトミクス分野に関しては、ベンタナが細胞切片の染色、封入、乾燥を全自動で行う装置を持っていることから、今後はこうした技術もサイトミクス分野に投入できる可能性もあるという。
小笠原氏は、「当面の3年間はゲノミクスに集中して勝負の基盤を作り、合わせて2年後からサイトミクスを加えた両分野で急成長を遂げ、5年で100億円の売上高を達成したい」と話す。将来的には、全体の約10%を占めるAS事業の売上高を20%以上に引き上げ、全事業の柱に成長させたい考えだ。
小笠原氏は、高密度、低価格、新しい用途といった三つの課題を挙げ、「これらニーズを満たす新製品をラインナップに加えていくことで、ロシュの優位性を市場に訴えていきたい」と話している。
- 【ロシュ・ダイアグノスティックス】DNAマイクロアレイ分野に本格参入
2008年02月08日
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