薬事・食品衛生審議会医薬品第1部会は22日、アボット・ジャパンが申請した関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」など五つの新薬について審議し、全て承認することを認めた。このうち、生まれつきインスリン分泌量が多く低血糖になってしまう高インスリン血性低血糖症治療薬は、他に類薬がないことから、3月の薬事分科会での審議扱いとなるが、それを含め今回承認が了承された新薬は4月までに承認となる見込み。承認が認められた新薬は次の通り。
<審議品目>
▽ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0・8mL(アボット・ジャパンが製造販売):有効成分はアダリムマブ(遺伝子組み換え)。効能効果は「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」で、生物製剤の「レミケード」「エンブレル」と同様にセカンドラインの治療薬。原体・製剤とも劇薬。再審査期間は8年。
同剤は完全ヒト化抗TNF‐αモノクローナル抗体で、作用が比較的長いことが期待されることから、投与は2週間に一度。関節リウマチの適応では、既に海外で72カ国で承認されている。免疫低下による感染症の懸念があるため、他の生物製剤と同様に全例調査が承認条件。
▽ルナベル配合錠(ノーベルファーマが製造販売):有効成分はノルエチステロン、エチニルエストラジオールで、いわゆる低用量ピル。効能効果は「子宮内膜症に伴う月経困難症」。毒劇指定なし。再審査期間は4年。
これまで中用量ピルやホルモン剤が使われてきたが、海外でも用いられる低用量ピルにすることで、これまでより長期投与しやすくするもの。
▽イルベタン錠50mg、同100mg(塩野義製薬が製造販売)、アバプロ錠50mg、同100mg(大日本住友が製造販売):有効成分はイルベサルタン。AII受容体拮抗型の降圧剤(ARB)で、ARBとしては日本で6番目。毒劇指定なし。再審査期間は8年。類薬と有効性、安全性は同程度。海外では109カ国で承認されている。
▽アログリセムカプセル25mg(シェリング・プラウが製造販売):有効成分はジアゾキシド。効能効果は「高インスリン血性低血糖症」。原体・製剤とも劇薬。再審査期間は8年。
高インスリン血性低血糖症は治療しないと低血糖により死亡したり、知能へ影響する恐れがある。国内推定患者数は2000250人程度という。同剤は未承認薬検討会議から早期開発が促されていた薬剤で、優先審査となった。全例調査が承認条件。海外では米独など9カ国で既に承認されている。
他に類薬がないことから薬事分科会で審議されることになった。
▽ナグラザイム点滴静注液5mg(アンジェスMGが製造販売):有効成分はガルスルファーゼ(遺伝子組み換え)。国内患者数6人というムコ多糖症VI型の酵素補充療法薬。既に3人は骨髄移植を選択しているため、3人がこの薬剤を使用している。原体・製剤とも劇薬。希少疾病用医薬品のため再審査期間は10年、全例調査が承認条件。欧米では既に承認されている。
厚生労働省は、ムコ多糖症の治療薬は緊急承認、薬価基準緊急収載しており、今回も薬事分科会通過後、同様の手続きをとる方針だ。
■小児用量追加などを報告
<報告品目>
▽デュロテップMTパッチ2・1mg、同4・2mg、同8・4mg、同12・6mg、同16・8mg(ヤンセンファーマが製造販売):有効成分はフェンタニル。効能効果は「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」。製剤的な工夫を行った新剤形医薬品で、より低用量で効果を発揮し、使いやすさを高めた。
▽ブレビブロック注100mg(丸石製薬が製造販売):有効成分は塩酸エスモロール。手術時の上室性頻脈性不整脈に対する急速静脈内投与に加え、持続投与できるよう用法・用量を追加した。これは承認時に既に海外で認められていた用法であったことから、承認条件として検討が求められていたもので、それを受け今回追加されることになった。
▽ビカネイト輸液(大塚製薬工場が製造販売):重炭酸イオンで、炭酸水素イオンにあるというカルシウムやマグネシウムとの結びつきによって固まりを作らず、品質劣化を低減できる。
▽シムレクト小児用静注用10mg(ノバルティスファーマが製造承認):有効成分はバシリキシマブ(遺伝子組み換え)。腎移植後の拒絶反応に用いる薬剤で、今回小児用規格と用法用量を追加した。承認時に国内での小児適応の検討が条件となっており、それを受け今回追加されることになった。
これら報告品目は3月中にも承認となる見込み。