厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会が、多剤服用(ポリファーマシー)対策に適正使用ガイドラインを作る方針をまとめた。高齢者の薬の止めどき、減らしどきの参考にしたり、副作用の発生を防ぐのが目的とされている。内服薬の多剤服用に関する国レベルの適正使用ガイドラインとの位置づけで、処方情報や服薬アドヒアランスの状況などを多職種間で共有する仕組み作りも提言している。
同検討会が整理した課題では、高齢者の薬物療法に関する現状について、服用薬の種類は75歳以上でより多い傾向があること、ポリファーマシーの患者に複数の医療機関を受診する傾向などを指摘し、特に6剤以上の併用により、薬剤関連の有害事象の頻度が高くなる傾向にあることを示した。最近、医療費削減の観点からポリファーマシーの問題が浮上。専門外来の取り組みなども見られ、社会的に大きな問題となってきた。
ガイドラインの策定に当たっては、経口血糖降下薬、高血圧治療薬など循環器用薬、認知症治療薬、重複処方が懸念される睡眠導入剤や抗不安薬など、特に検討が必要な薬効群を考慮すべきとし、各医療現場の特徴に合わせて薬剤数を調整したり、処方変更する場合の考え方を整理することが明記された。
一方で、検討課題として多職種間の連携を強調しているのが目立つ。多職種間で情報共有する仕組みを作るため、薬剤管理の方法や転倒など患者の状況、処方情報や服薬アドヒアランスの状況を共有することを求めており、さらに電子版お薬手帳を活用した処方・調剤情報の一元的、継続的な把握など多職種を含めた情報共有を支援する仕組みも必要としている。
もちろん、現存するポリファーマシーの問題を解決し、薬剤費のムダを解消していくため、医療関係者が一致結束して高齢者の薬を減らすよう取り組むことは重要だ。ただ同時に、ポリファーマシーの問題は何が根幹なのかと言えば医師の処方にある。一度処方してしまうと、医師も薬を中止しにくいと言われているだけに、「処方」に焦点を当ててメスを入れていくような対策も打っていかなければ、ガイドラインを作っても本質的な問題解決にはならないのではないか。
ポリファーマシー問題では、薬剤師が果たす役割の重要性も強調されている。実際に医療現場で薬剤数削減に貢献したとの報告が増えてきているのも事実だが、「これだけ薬を減らしました」という残薬対策にとどまっている。
実際、ポリファーマシー対策に取り組む医師も「薬局で残薬を減らしても、処方が止まらなければ意味がない」と指摘しており、最終的には適正使用ガイドラインを含めた様々なポリファーマシー対策が処方時の抑止力につながることが大切である。医師の処方権は非常にセンシティブな部分だが、真正面から議論していくことを望みたい。