薬歴作成、音声入力で効率化‐イベントや在宅業務に時間活用
ファーマみらい津田沼薬局(千葉県船橋市)は、血管年齢、骨量の測定といったイベントの開催などを通して、シニア層の患者が多い地域に密着した薬局づくりを進めている。薬局長の蓮見和也氏を含めて薬剤師2名のみの小所帯だが、開設時から使用している音声認識薬歴作成支援システム「ENIFvoiceSP(エニフボイスエスピー)」で業務を効率化し、患者からの聞き取りと並行して薬歴を作成するなど、余った時間をイベントの企画や在宅業務などに生かしている。今春からは、変換効率を大幅に向上させた同システムの機能強化版「ENIFvoiceSP+A(プラス・エー)」を導入し、薬歴作成にかかる負担をさらに軽減した。その分、住民と触れあう認知症予防をテーマとした講演会を企画し、地域に密着した薬局づくりを一層充実させている。
ファーマみらい津田沼薬局は2015年11月に開設した新しい薬局で、薬剤師2人、事務員1人の計3人が常駐している。1日あたりの平均処方箋枚数は約40枚で、隣接する津田沼医院や千葉県済生会習志野病院の患者が大半を占める。津田沼医院の主な診療科は泌尿器科と内科で、膀胱炎や前立腺肥大の患者が多い。そのため、薬局では尿漏れパッドの品揃えを充実させ、ファーマみらいグループが開催するおむつの勉強会にも積極的に参加している。また、管理栄養士の資格を持った事務員が栄養面でアドバイスを行ったり、栄養士の目線で選んだ食品などを陳列しており、これらを目当てに来局する人も多いという。患者は60~70歳代の患者が多いことから、血管年齢測定や骨量チェックといったイベントを開き、地域住民に親しみやすい薬局づくりに努めているのが特徴である。蓮見氏は、「健康相談にも応じており、気軽に立ち寄れる薬局だと思います」と話している。
変換効率向上し能率アップ
同薬局では、業務終了後に地域住民向けのイベントを企画している。多くの薬局では、この時間に薬歴を作成していることが多いが、グループ会社の東邦薬品が開発した「ENIFvoiceSP」を開局時から取り入れたことにより、業務の効率化を進め、薬歴作成以外に活用できる時間を生み出してきた。SPは、患者からの聞き取りと同時に音声で情報を入力して薬歴を作成できるため、キーボードや手書きよりも迅速な薬歴作成ができるほか、聞き取り後に薬歴を記載する二度手間を省ける。
今春からは、SPの機能強化版である「+A」を導入した。薬剤師が使用する医療用語などが登録された「音声辞書」を搭載していたSPに比べ、+Aでは用語が2倍以上に増え、患者の住所、郵便番号、固有名詞などが円滑に変換できるようになった。蓮見氏は、「以前は県名から自分で登録していましたが、+Aでは市町村に続く地名から登録すればよいので、以前よりも楽になりましたね」と実感を語る。変換効率が上がったことで、入力時の速度も向上。患者一人の薬歴作成にかかる時間は、キーボードでは3分ほどかかるが、+Aを使うと約30秒で終了するなど、大幅な効率化を実現している。
働きやすい職場環境を実現
蓮見氏は、聞き取る時に患者のプライバシーに配慮して会話時よりも小さい声量で入力している。SP、+Aは共に学習機能を備え、使用するほどレベルが上がり、使用する人の声量や速度に順応していく仕組みだが、+Aでは低レベルの段階で小さい声量で入力しても正確に変換できるよう改善が見られている。
また、蓮見氏は「医薬品の製品名や識別コードを音声入力し、添付文書を呼び出せる機能も重宝しています」と話す。後発品を希望する患者に対して、事務員を通して薬価を照会しなくても先発品との価格差を即座に示すことができ、薬剤師以外のスタッフの手間や時間を省くことにも役立っている。
「ENIFvoiceシリーズ」の導入によって業務の効率化が進んだ結果、同薬局では残業はほとんどなくなり、スタッフが働きやすい職場環境の実現にも寄与している。蓮見氏は、イベントの企画以外にも、現在担当している透析患者や脳梗塞患者の在宅業務に費やす時間を充実できた点もメリットに挙げている。
現在は、栄養に関する講演などから構成する認知症予防の講演会の実施を考えているという蓮見氏。「まだ設立してから日が浅い薬局ですが、地域の方々に親しみやすい薬局を作りたいです」と今後の目標を語った。
ファーマみらい津田沼薬局(東邦薬品)
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