いよいよ、4月からスタートを切る日本の新たな医療制度では、生活習慣病予防の充実が大きな柱の一つだ。新たにメタボリックシンドロームに着目した特定健康診査・特定保健指導が盛り込まれ、医療保険者にその実施が義務づけられた。
国を挙げて、予防をより一層重視した生活習慣病対策を進めていくことが求められているわけだが、あくまで対象は国民。「何か問題があった時は指導に従えばいい」といった普段からの意識を、どう変革していけるかが緊急の課題でもある。
健康に関する人々の意識について、東京都が今月発表した世論調査(昨年12月に実施。20歳以上の都民1898人が回答)を参考に見てみる。健康に関する世論調査は、2004年の前回調査から3年ぶりの実施で、心と身体の健康づくり、喫煙、生活習慣病、定期予防接種、新型インフルエンザ、エイズ・性感染症などについて聞いている。
自分自身の健康状態について、「よい」(よい、まあよいの合計)と評価した人は84%を占めた。このうち「よい」は37%で、前回調査に比べて6ポイント増えている。
しかし、毎日の生活の中で「心のゆとりを持つことができていない」とした人は24%、同じく毎日の生活の中で「イライラやストレスを感じる」とした人は70%だった。前回調査より4ポイント増えており、中でも30代は男性、女性とも最も感じている世代となった。
体の健康と共に、心の健康への対策も重要な課題として浮き彫りになったが、心の健康づくりに対して行政がどのような内容を普及・啓発していくことを望むか(複数回答)では、「悩みに応じた専門の相談機関・医療機関の情報」が33・5%と最も多く、「地域で気軽に参加できるストレス発散の場や活動の場(趣味のサークル・団体など)の提供」が28・0%のほか、「ストレスに関する情報」「余暇に関する情報」「うつに関する情報」「睡眠などの休養に関する情報」など、“情報”提供を求める人が多い結果だった。
もう一つ、この調査で特徴的なのは、悩み事や心配事などでストレスを抱えた時に、気軽に相談できる相手(複数回答)を聞いたこと。
回答では、「家族・親族」が79・5%で最も多く、続いて「友人・知人、職場の同僚・上司など」が64・0%、「医療機関等の専門家(医師・看護師・カウンセラーなど)」が8・7%で、「インターネットの掲示板など」はわずか1・4%に過ぎなかった。様々な情報ツールを利用はしているものの、人によるアドバイス、人との触れ合いを欲している社会であることは間違いない。
来年からは、改正薬事法による新しい医薬品販売制度も動き出し、医薬品のほか様々な健康関連商材を扱う薬局、ドラッグストアの役割もますます重要になってくる。
新たな特定健診・特定保健指導制度により、メタボリックシンドロームについての認知が深まるのと相まって、生活習慣病予防・未病改善といった世の中の流れは、薬系店頭にとって大きな追い風になるとの見方もある。
そのためには生活者の健康意識を改善させるような店頭提案や相談体制の充実など、小売側が意識を“改善”する努力も必要だろう。