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児玉新体制に望む日薬組織の強化

2008年03月24日 (月)

 4月1日より児玉孝新会長の下、日本薬剤師会が新たなスタートを切る。児玉氏は立候補時の選挙公約として、「薬事法、薬剤師法、医療法の改正がなされた変革の時期にこそ、大阪府薬剤師会の支部長や会長として培ってきた自らの様々な経験を、全国の日薬会員に役立てたい」と訴えかけている。

 児玉氏は、大阪府薬でどのような活躍をしてきたのか。いの一番に挙げられるのが、大阪府下の医薬分業の推進だ。常務理事時代の1990年11月に立ち上げた「支部分業推進研修会」は、大阪における面分業の基盤構築に大きく寄与した。

 この研修会は、95年には近畿2府4県の薬剤師会の参画を得て「近畿薬剤師分業推進研修会」へと拡大する。その後、「近畿薬剤師学術大会」として現在に引き継がれている。また96年には、大阪府薬独自の「大阪ブロック分業推進研修会」が開催され今日に至る。

 これら研修会は、児玉氏の狙いであった「1泊2日で仲間意識を芽生えさす」ことが的中し、近隣の薬局同士が抵抗なく備蓄医薬品を分譲し合う源となった。いま話題の後発薬についても、大阪では近隣薬局同士の分譲が目立つ。近畿薬剤師分業推進研修会は、近畿2府4県の薬剤師会が一枚岩になって事業に取り組むという副産物も生んだ。

 さらに90年代には、児玉氏自身が先頭に立って、国立病院や大学病院を中心に、院外処方せん発行やFAX設置のお願いに回った。当時5%弱であった大阪の院外処方せん発行率が50%まで向上したのは、分業担当理事としての児玉氏の熱意によるところが大きかったともいえる。

 00年に府薬会長に就任してからは、長年先送りされてきた会費の値上げに着手。火中の栗を拾う形で、府薬の財政再建を実現した。また、将来的な本館建て直しを見据えて府薬会館の両隣の土地買収を進め、04年には1525m2の土地を確保した。

 全国中小企業団体中央会の補助金を得て、OKISS(大阪府薬剤師会かかりつけ薬局情報交換システム)を構築し、府薬のIT化推進に貢献したことも見逃せない。95年の阪神淡路大震災発生時には、逸早く現地に駆けつけ、医薬品集積所の整備に尽力した。

 このように「これと思ったら必ず実行する」のが児玉氏の信条だ。その嗅覚を賞賛する声も少なくない。だが、その一方で、これら事業を成し遂げるには、当時の中西光景副会長をはじめとする理事や職員の協力が不可欠であったことは言うまでもない。そこには、人と人の触れ合いを大切にする児玉氏ならではの人心把握術が垣間見られる。

 その児玉氏に日薬会長としてまず望みたいのは、組織の強化だ。チェーン店の会員が脱会していく中、薬剤師個人の意思で入会を希望する魅力ある薬剤師会を確立してほしい。児玉氏が目標とする会員数12万人が実現すれば、必然的に都道府県薬、さらには支部の組織強化へとつながる。組織力の向上は、政治力の強化にもつながっていくからだ。

 IT戦略への対応も急務だ。日薬が有するたくさんの情報を、タイムラグなく全国の会員に流せるシステムの構築が待ち望まれる。

 また、6年制の薬剤師が誕生するまでに、それに見合った職場環境の整備が必要になるだろう。日薬が専門薬剤師の認定を行うのも、その施策の一つになると思われる。これからの児玉新会長の手腕に期待したい。



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