厚生労働省医政局長 武田俊彦
今年は、医薬品・医療機器等の臨床開発環境の整備や戦略的な国際展開の支援に集中的に取り組むべき年です。「医薬品産業強化総合戦略」の見直しを踏まえ、魅力ある研究開発・規制・事業環境の整備により、日本発の創薬産業拠点の創出に向けた動きを加速していきます。
また、ゲノム創薬、核酸医薬、AIや個別化医療、ビッグデータ利活用の進展等の治療・開発アプローチの変化を捉え、バイオ医薬品においても、有効性・安全性に優れ、競争力がある低コストで効率的な創薬を実現できる環境の整備を進めることで、最終的には、海外市場にも展開する「創薬大国」の実現を目指します。
さらに、仕切価交渉のあり方、早期妥結と単品単価取引の推進等について流通関係者が取り組むガイドラインを作成し、国が主導して遵守を求めていくことにより、適正な医薬品流通を確保してまいります。また、産官学連携によるオールジャパンでの医療機器開発等革新的な医療機器等の開発環境の整備に集中的に取り組んでまいります。
また、医療の国際展開については、昨年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」等を踏まえ、わが国の経験や知見の共有、人材育成の支援等により、相手国の実情に応じた医療協力を進め、医薬品や医療機器の利用につなげてまいります。
そして、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック競技大会も見据え、訪日・在留外国人患者が安心・安全に日本の医療機関を受診できるよう、「外国人患者受け入れ体制が整備された医療機関」の整備に加え、地域の実情を踏まえながら外国人患者の受け入れ体制の裾野拡大に着手し、受け入れ環境のさらなる充実を目指してまいります。
昨年に公布された臨床研究法が本年4月に施行されます。質の高い診療を患者・国民に提供するためには、質の高い臨床研究の実施が必須であり、臨床研究法は、臨床研究の手続き、研究を審査する認定臨床研究審査委員会の適切な実施のための措置等を定めることにより、臨床研究を推進することを目的としています。
法の施行に当たっては、臨床研究の実施基準等に関する審議会での議論を踏まえ、円滑な施行に向けて、臨床研究の現場の実態に即した運用について検討を進めてまいります。
今年1年は医療行政にとって、未来を見据えた様々な改革を実行に移していく重要な年になります。
施策を進めるに当たり、医療に携わる様々な関係者の思いを汲み取り、医療を受ける皆様の立場に立ちながら、施策の展開に努力してまいります。