抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の設置が各病院に広がりそうだ。今春の診療報酬改定で、ASTの取り組みを評価する加算が新設されることが固まった。
このほど示された個別改定項目には「感染防止対策加算においてASTの取組に係る加算を新設する」と記載され、「抗菌薬適正使用支援加算」の新設が明記された。
その算定要件は「院内に抗菌薬適正使用支援のチームを設置し、感染症治療の早期モニタリングとフィードバック、微生物検査・臨床検査の利用の適正化、抗菌薬適正使用に係る評価、抗菌薬適正使用の教育・啓発等を行うことによる抗菌薬の適正な使用の推進を行っていること」と定められている。施設基準は、医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師からなるASTを組織することなどとされ、「3年以上の病院勤務経験を持つ感染症診療にかかわる専任の薬剤師」の配置が盛り込まれた。
以前から感染制御チーム(ICT)が各病院に整備されているが、院内感染の発生をいかに抑えるかに活動の主眼が置かれていた。抗菌薬の届出制や許可制など既存の方法だけでは不十分との考えから、ASTはもっと踏み込んで抗菌薬の適正使用を推進する役割を担うことになる。
その具体的な役割は、関連8学会が2017年に公表した「抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」に詳しく記載されている。対象患者を抽出してラウンドなどを実施し、感染症治療の状況を把握した上で、必要に応じて主治医に対して適正な抗菌薬の使用を提案するのが活動の柱だ。
現在はまだASTを設置する病院は少ないが、診療報酬新設を契機に今後広がりを見せるだろう。チーム医療の一員として薬剤師が職能を発揮するチャンスと捉えたい。
このほか個別改定項目には、外来診療等における抗菌薬の適正使用を推進するために「小児抗菌薬適正使用支援加算」の新設が盛り込まれた。
算定要件は「急性上気道感染症又は急性下痢症により受診した小児であって、初診の場合に限り、診察の結果、抗菌薬投与の必要性が認められず抗菌薬を使用しないものに対して、抗菌薬の使用が必要でない説明など療養上必要な指導を行った場合に算定する」などとなっている。
かぜ症状の多くはウイルスによって引き起こされるが、抗菌薬が処方されることが少なくない。そのような抗菌薬の不適切な使用を抑制するのが加算新設の狙いだ。医師に適正使用の認識が広がれば、薬局薬剤師も患者や家族への説明や医師への疑義照会をしやすくなる。
これらの動きの背景には、世界的に進む薬剤耐性(AMR)への対策がある。日本では16年にAMR対策アクションプランが策定され、具体策が進んでいる。抗菌薬適正使用における薬剤師の役割は、今後ますます重要になりそうだ。