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薬価制度改革、業界は正念場の年

2008年04月09日 (水)

 いよいよ2008年度が幕を開けた。世間ではガソリン税の暫定税率廃止が注目を集める新年度のスタートだが、薬業界にとっては、1日付で実施された薬価改定が最大の出来事と言える。

 今回の薬価改定は薬価ベースで5・2%、医療費ベースで1・1%引き下げられた。前回改定と比べ、引き下げ率は低いが、各社にとって収益に直結する数字だけにその動向に注目が集まった。

 また改定では、新たな算定ルールが適用された市場拡大再算定のあり方も焦点の一つであった。今回に限り激変緩和措置が採られ、全て再算定による改定率と市場実勢価から計算される改定率の平均値とするルールが適用されたものの、それでもARB6成分で10・1%(「プロミネント」は配合された利尿剤が通常改定率適用で9・9%)、SSRI3成分も10・0%など、大幅な引き下げとなった。

 実際、これら製品を抱えた企業は引き下げ率で業界平均を上回っている。市場拡大再算定品目の有無が、各社の業績に直結することだけは確かであろう。

 一連の改定を振り返り、日本製薬団体連合会の森田清会長は、加算率の引き上げなど業界の主張が一部取り入れられたことは評価しながらも、「市場拡大再算定」や「特例引き下げ」の撤廃といった要望が聞き入れられなかったことに対して、強い不満を口にした。

 その一方で森田会長は、業界の願いが届かなかったとはいえ、市場拡大再算定での「激変緩和措置」や特例引き下げが406%の水準に戻されたことを「廃止に向けた第一歩と位置づけたい」とし、さらに薬価制度の抜本改革について、次回改定までに成果を出すために、議論のテーブルに載せられたことを評価している。

 このようなことから考えると、新年度の業界の最優先課題として、次期薬価制度改革への対応を挙げることができるだろう。

 昨年の中央社会保険医療協議会に業界案が提示されたが、その中身は「(特許または再審査期間中にある新薬の価格は)、通常の薬価改定方式を第一義的には適用せず、通常より緩和された一定の条件下で薬価引き下げを猶予した上で、当該期間が満了し後発品が上市された後に、改定を猶予した累積分等を引き下げる」との考え方が大きな柱。

 森田会長は3月の評議員会終了後に会見で、「新薬の価格設定ルールや特許期間中の価格維持に対して、広く納得される必然性が必要。業界案が医療にとっても、産業にとっても良いことだと説明しなければならない」との認識を示した。

 実際、日薬連の新年度の事業計画の一つに今後、見込まれる薬価の本格論議に備えて、日本製薬工業協会と協力し、提案内容の精密な理論武装を行っていくことが盛り込まれており、業界を挙げてこの問題に対応していくことを鮮明にしている。

 ただ、この引き下げ猶予は、市場実勢価格が薬価を下回っても引き下げないことから、「市場実勢価主義」という薬価基準制度の基本から外れるという見方が一部にあり、「財政当局は受け入れがたい」という意見もある。この猶予をどう定義づけるかが課題であり、その点からも、業界がどう理論構築するのか注目されるところだ。

 新年度は業界にとって、次期薬価制度改革の実現へ向けた地ならしの年であり、正念場の1年がスタートしたともいえる。森田会長は秋にも業界案を提示したいとするなど、早くも次期改定へ向けた準備は始まっている。単に「財政ありき」の議論ではなく、筋の通った議論を通じて、よりよい制度が構築されることを期待したい。



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