警察庁が先月発表した犯罪統計資料によると2017年1年間の全国の薬物事犯検挙人数は1万3542人で、ここ数年横ばい状態が続いているようだ。その一方で、大麻事犯検挙人数は過去10年間では09年の2920人をピークに減少傾向にあったが、14年度以降増加に転じ、昨年は3008人と初めて3000人を超えるなど過去最多となった。
14年といえば、東京・池袋で「危険ドラッグ」使用者の運転による死亡事故をきっかけに危険ドラッグが大きな社会問題としてクローズアップされ、政府も規制強化に本腰を入れ始めた時期。その後、一気に終息した感のある「危険ドラッグ」に代わり大麻への移行が進んでいるのか。
年齢層別検挙人数では50代以上は152人、40代347人、30代1038人、20代1174人、20歳未満297人と若年層のウエートが高い傾向が見られた。20歳未満のうち高校生が53人、中学生も2人いた。15年に京都の小学生児童が大麻吸引を告白した話もあり、大きな衝撃が走ったことは記憶に新しいが、大麻乱用の若年傾向が水面下で増大していることが懸念される。
昨年、警察庁が大麻乱用者の実態把握として、大麻の単純所持での検挙者(各都道府県から回答を得た535人分のデータ)を対象に実施した調査結果では、初めて大麻を使用した年齢は平均21.9歳で、その経緯は「誘われて」63.7%が多く、使用した年齢が若いほど誘われて使用する率が高かった。その動機は「好奇心・興味本位」が全体の54.9%と半数以上を占めた。
一方、大麻に対する危険性の認識は「あり」が30.8%で、とくに年齢別で危険性の認識が低いのは20歳代(なし:70.8%)だった。これらの結果を踏まえ警察庁は「若年層を中心に大麻乱用防止の広報啓発を徹底していく必要がある」との見解を示している。
大麻を含めた覚醒剤、危険ドラッグなど薬物乱用防止に向けた取り組みは、各自治体レベルでもユニークな取り組みが進められている。昨年度には福岡県が、全国で初めてとなる薬物乱用防止VR動画サイト「ダメドラワールド」を作成し、公開。薬物の恐ろしさを動画で疑似体験する形で乱用防止の啓発を進めている。
また、大阪府豊中市保健所では、地元のライブハウスと協働し、ロックバンドや高校生らと、薬物の誘いを断る勇気を持つよう呼びかけるオリジナルの曲のほか、プロモーションビデオを制作。YouTubeや市ホームページで公開し、CDの配布も行うという。
若年層へ向けた薬物乱用防止啓発は、若年層に受け入れられる方法で取り組んでいくことが必要になる。地域、行政、警察などが一体となって進めるべきだろうが、そこには薬物の専門家である薬剤師も積極的に関与していってほしいところだ。