調剤薬局大手の日本調剤は、2030年に向けての長期ビジョンを策定、発表した。これまでも単年度の業績予想に加えて、中期経営計画は3カ年のスパンで策定していたものの、今後の医療・医薬品業界を取り巻く変化を見据えると、3年という期間での計画には「不確定要素が多い」ことを理由に挙げる。また、医薬品等ネットワーク事業と調剤薬局事業を主力事業とするメディカルシステムネットワークも、第5次中期経営計画の期間を診療報酬改定サイクルに合わせ、従来の3カ年から4カ年に変更している。
医療・医薬品業界を取り巻く環境が、かつてない大きな変化を迎えるとされる。その境界線となるのが、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる25年。今後は「医療費の増加抑制」と「良質な医療サービスの提供」を同時に実現するために様々な制度改革が進められるが、こうした変化は既に着々と進行しつつある。
調剤薬局業界に関しては、15年10月に「患者のための薬局ビジョン」が厚生労働省から公表され、薬剤師・薬局の将来像、即ち“必要とされる薬剤師像・薬局像”が具体的かつ明確に示された。同時に25年までに全ての調剤薬局をかかりつけ薬剤師・薬局に再編するとの構想も打ち出された。そして一昨年の4月、今年4月の調剤報酬改定では、これらビジョン・構想の実現に向けた調剤報酬基準の改定(モノからヒトへの転換)が進められている。
このほか、毎年薬価改定などの薬価制度の抜本的な改革や、分割調剤の促進、特区における遠隔服薬指導の開始など、制度改革が矢継ぎ早に実施されており、今後もこれまで以上に多くの改革が、これまで以上に早い時間軸で進められていくことは想像に難くない。そこで日本調剤では、制度改革などにより外部環境が大きく変化した都度、計画を変更するのでなく、30年という先にグループとしてどのような規模イメージを描いているかとの長期ビジョンを示すことにした。
現在、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能を備えた上で、地域住民の主体的な健康づくりを積極的に支援する「健康サポート薬局」が全国各地で誕生しているが、今年3月30日時点で全国の届出受理状況は879軒にとどまっている。しかし、調剤薬局チェーンもここに来て、ようやく健康サポート薬局に向けた取り組みを進めてきた感がある。
何よりも国そして患者が求めるのは、地域に密着した薬局、あらゆる相談ニーズに親身に応じてくれる高い技術レベルとノウハウを持った薬局・薬剤師である。制度改革が薬局を変えるのは間違いないが、10年、20年先の薬局は業務システム上の劇的な変化はあっても、本来の機能は変わるはずがない。今後もその道筋を、しっかりと見届けたいと思う。