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7兆円買収後に見える世界

2018年5月25日 (金)

 武田薬品がアイルランドのシャイアーを約7兆円で買収することになった。収益性の高い希少疾患治療薬を手中に収めることで、臨床開発後期のパイプラインを一気に補強できるのみならず、両社の売上高は合計で3兆4000億円超となり、世界9位規模に浮上。日本の製薬企業として初めてグローバルメガファーマの仲間入りを果たす。さらに統合後の武田は、米国の売上比率が48%に高まり、海外売上高比率は8割以上に到達し、名実共にグローバル企業となる。

 武田は、「アクトス」など国際戦略4製品が牽引してグローバル展開を加速させてきたが、癌領域とバイオ医薬品の対応に遅れ、2008年に米ミレニアム社を買収。その後もスイスのナイコメッドを買収し、大型買収路線に舵を切った。

 しかし、研究開発の生産性向上という根本的な課題が常に横たわっていた。2年前には研究拠点を日米に集約し、テーマも癌、消化器、中枢神経系に特化する大幅な再編を断行。湘南研究所をはじめリストラの風も吹いた。そして、今回のシャイアー買収である。ミレニアム買収から10年。その間、目立った大型新薬を出せず、結局は時間を買った格好となった。

 日本で過去最大となる7兆円という買収額も大きな話題になった。ただ、企業価値評価の指標であるEBITDAを分析した専門家からは「それほど無理なディールではない」との声も出ている。ウェバー社長が強調するように、シャイアーの希少疾患治療薬を手に入れることで、統合後は血漿分画製剤を加えた五つの事業領域に絞られ、ポートフォリオの再編と収益性の向上が実現する。世界トップ10入りという規模追求も、米国のバイオベンチャーから導出先候補に挙がってくるメリットなどが期待できそうだ。

 もちろん、シャイアーとの統合後、研究開発部門の改革の成果が問われる。現在、早期段階に集中するパイプラインが後期に移行し、それを回していくサイクルが実現しなければ、再び大型買収を仕掛けなければならない事態に陥るだろう。一方で統合が成功すれば、武田はグローバルメガファーマの称号と共に大きな果実を得ることになる。

 今回の買収には、様々な見解が飛び交っている。確かに巨額の債務を不安視する声も多く、統合後の武田について、ウェバー社長がどういうビジョンを打ち出して人心を掴み、全世界の社員を動かしていくかにかかっている。それでも武田の今回の決断は追い込まれた事態とはいえ、チャレンジしないリスクと比べれば非難されるものではないだろう。

 停滞する日本市場で活動する国内製薬企業にも大きな影響を与えるはずである。武田はメガファーマを志向する決断を下した。日本では薬価制度の抜本改革が断行され、他の国内メーカーも今までのように幅広いポートフォリオを抱える戦略では生き残りは難しい。武田の買収劇は、国内製薬企業に生き残りを本気で考えるきっかけを与えてくれたはずだ。




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