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薬物相互作用防止に注力を

2018年06月01日 (金)

 製薬会社に向けた薬物相互作用ガイドラインの改訂を受けて、添付文書に記載される薬物相互作用に関する情報が今後、新薬から順に充実しそうだ。薬剤師はその動向をしっかり把握した上で、添付文書の情報を活用し、薬物相互作用の防止や早期発見を推進する必要がある。

 現在、厚生労働省が作成を進めている「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」の内容が最終的に決まる局面を迎えている。これは、医薬品開発時に相互作用に関してどのような非臨床試験や臨床試験を行うべきかを、主に製薬会社に対して示したものだ。

 グローバル化している医薬品開発に対応するために、日米欧の規制当局が協調し各極での改訂作業に取り組んできた。日本では2014年に同ガイドライン最終案が提示され、欧米との調和を経て17年9月には「9月4日版」が公表された。国際的な調和は最終段階に達しており、近く最終決定される見通しだ。

 同ガイドラインは製薬会社に向けたものだが、医療現場にも影響がある。この中で示された「薬物相互作用に関する情報提供と注意喚起の考え方」に沿って今後、新薬の添付文書に記載される薬物相互作用の情報は、より分かりやすく、科学的な内容に変化していくと見られる。

 具体的には、薬物代謝酵素の阻害や誘導の強度分類の考え方が盛り込まれる見通しだ。薬物代謝酵素の阻害によって、基質薬の血中薬物濃度時間曲線下面積(AUC)を5倍以上に上昇させる阻害薬を「強い阻害薬」、2倍以上5倍未満に上昇させる阻害薬を「中程度の阻害薬」、1.25倍以上2倍未満に上昇させる阻害薬を「弱い阻害薬」とするもの。同様に誘導薬でも3段階分類が示される予定だ。

 個々の薬剤の組み合わせごとに相互作用の有無や程度を評価するのではなく、グループ間で評価することによって、相互作用を把握しやすくなる。対処法の判断を行いやすくなると期待されている。

 薬剤師は今後こうした情報を積極的に、薬物相互作用の防止や早期発見に役立てるべきだ。対物業務から対人業務へのシフトが求められる中、対人業務の一つとして薬物相互作用防止への関与は焦点になる。今春の調剤報酬改定でも「薬局における対人業務の評価の充実」と題して、重複投薬・相互作用等防止加算の点数が引き上げられた。

 このほど岐阜県薬剤師会と岐阜薬科大学が実施した共同研究では、重複投薬・相互作用等防止加算を算定した事例において、薬剤費を1件あたり1075円削減できたことが明らかになった。薬剤師の介入は、医療の質の向上に加え、医療費抑制にも役立っていることが示された。

 薬物相互作用の評価や防止は簡単なことではないが、薬剤師だからこそ介入できる領域だ。存在意義を強く示すためにも、さらなる関与が求められる。



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