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次期改定、地域守る薬局の評価は

2025年09月19日 (金)

 中央社会保険医療協議会で2026年度調剤報酬改定に向けた議論が始まった。厚生労働省は「薬局が都市部に集中し、処方箋発行枚数に対する薬局数は大都市に集中している傾向がある」とし、地方部の薬局が減少する中で、薬剤師の地域偏在をめぐる問題を論点に挙げた。

 社会保障制度改革は待ったなしの状況だ。次期診療報酬改定はメリハリのある評価が求められ、調剤報酬では都市部医療機関の近隣にある門前薬局の調剤基本料や地域支援体制加算で大きな見直しが行われる可能性がある。

 薬局の後発品数量割合も90%に到達し、後発品調剤体制加算を廃止・縮小すべきとの指摘が上がる。今後の議論次第では、薬局に厳しい改定になることを覚悟しなければならないだろう。

 総会では日本薬剤師会の森昌平委員が「薬局経営は厳しい状況。地域医療を支えている中小薬局は特に厳しい」と地域差を課題に挙げ、調剤基本料の加算を求めた。

 しかし、他の委員からは薬局薬剤師と病院薬剤師の偏在解消を求める声が強く、一部の委員は「病院薬剤師が不足する問題を医科の報酬だけではなく、薬局の調剤報酬で対応することも検討すべき」と発言。薬局を擁護する意見は少なかった。

 病院薬剤師不足を調剤報酬で対応する問題に対し、日薬の岩月進会長は記者会見で「人材供給の主体が違う。病院の職員の問題だ」とコメントし、日本保険薬局協会の三木田慎也会長も「本論とかけ離れた議論」と苦言を呈した。現場の薬剤師からも「病院薬剤師に関連した診療報酬は医科の財源であり、そもそも財源が違う。できるわけがない」と実効性を疑う。

 ただ、問題の本質は、本来は調剤報酬を議論する場であるにも関わらず、病院薬剤師不足が提起される状況を作り出してしまった点だ。病院薬剤師を取り巻く厳しい状況が他の医療職種から理解されている一方、薬局薬剤師については「多すぎる」との認識を変えることができていない。その現状は重く受け止めるべきであろう。

 東京商工リサーチの発表によると、1~8月における調剤薬局の倒産は20件と過去最高の22件に迫った。資本金1億円以上の大手薬局は24年度業績が増収増益だった一方、同1億円未満の中小薬局は増収大幅減益と二極化にあると分析した。地方の中小薬局は賃上げ原資の確保が覚束ない状況だ。

 日薬は、地方の小規模薬局が直面している経営環境の厳しさをアピールする重要な機会だったが理解を深められず、支払側委員から「必要な機能を満たしていない薬局が多い」と指摘された。次回は個別項目の議論に移り、厚労省から具体案が出てくる可能性が高い。地域医療を守る薬局に対する報酬上の評価はどうあるべきなのか、国民に見える形でしっかりと提案する必要がある。



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