東海大学は健康管理のエビデンス構築を目的として、4月から医学研究科ライフケアセンターに、産学連携プロジェクト「健康医科学研究」を立ち上げた。プロジェクトでは医学部と体育学部が健康関連企業と連携し、健康や長寿の科学的解明を図ると同時に、「個人に最適な栄養と運動の融合プログラム」確立を目指すもの。参加企業は、新しいサプリメントなどの効果について、データを収集することもできる。プロジェクトでは現在、参加企業を募っており、10日には都内で説明会を開くなど、広く呼びかけている。
説明会の冒頭、あいさつに立った猪子英俊東海大学医学部長は、「メタボリックシンドロームや生活習慣病がクローズアップされる中で、未病あるいは健康な段階から対応する予防医学、健康産業への関心は高い」としながら、「健康食品や運動処方などにはリスクの高いものも多く、早急に科学のメスを入れる必要がある。健康産業の健全な発展を図る意味からも、学部を挙げて広い視野で取り組んでいきたい」と抱負を語った。
プロジェクトは、健康の維持・増進を図る方法が未だに経験や勘に頼っている面が強いことから、個人が最適な健康を得るために必要な医学的エビデンスを作ることを目的にスタートした。研究の中核をなす「共通研究」と、参加企業が抱える課題に解決策を与える「個別研究」で構成される。
共通研究は「健康と長寿のための栄養と運動の研究・融合プログラム」をテーマとし、基礎研究と応用研究の2本立てで進められる。基礎研究では、栄養と運動に共通するエネルギー代謝に焦点を当て、加齢による筋肉衰退のメカニズムとその予防、ギブスの拘束による筋肉衰退のメカニズム、筋肉量・血流量の測定機器開発などに取り組む。応用研究では、健康について医学的に検査・助言する方法の確立を目標に、検査と栄養・運動指導を行う「健康医科学センター」をライフケアセンター内に設置し、最適プログラムの開発を推進する。
個別研究は、基礎研究で得られた知見をベースとして、各企業の求めるデータを収集する。例えば新しい機能性栄養補助食品の効果、運動機器や測定機器の有用性などだ。
このプロジェクトは、従来の産学寄付講座とは研究体制が異なっている。寄付講座は、特定の企業と大学の一学部または研究室が対応し、研究目標も一つに絞られていた。これに対し東海大学のプロジェクトは、様々な企業や自治体と多くの学部が、健康医学に関わる多様な共同研究を展開し、健康についての総合ソリューションを提供していくもの。
既にオリンパス、味の素、SRL、島津製作所、タニタ、三菱化学メディエンス、DNAチップ研究所など、10社以上が参加の意向を示している。これら参加企業と大学との橋渡しや調整を図る産学連携の拠点として、参加企業が集まって「健康医科学産業推進協議会」も設置された。