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岡山大学は29日、7月1日から「前立腺癌に対するアジア国際共同研究」を開始すると発表した。この国際共同研究は、同大が取り組む「ナノバイオ標的医療の融合的拠点事業」(ICONT事業)の一環として実施されるもので、北里大学をはじめ、韓国、中国、シンガポールの代表的医療研究機関が参加する。都内で会見した研究代表者の公文裕巳氏(岡山大ICONTセンター長)は、「国際共同研究はIL-12遺伝子治療を中心に実施するが、これはあくまでもモデル事業。最終的な目標は、癌遺伝子治療におけるアジア人のための次世代創薬プラットフォームを構築することで、次の技術シーズもあり、継続的に事業を展開していきたい」と抱負を述べた。
岡山大のICONT事業は、2006年度の科学技術振興費「先端融合領域イノベーション創出事業の形成」に採択されおり、今年度で3年目を迎えている。同事業の目標は、産学連携学内特区として設立されたICONTセンターを中心とし、標的医療のイノベーション拠点形成していくことで、特に遺伝子治療において、アジアの中核拠点となることを目指している。
また岡山大は、既に2種類の遺伝子治療臨床研究プロトコールを完遂し、さらに今年2月には免疫遺伝子治療としての「前立腺癌に対するIL-12遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療臨床研究」の実施が承認され、5月13日に第1例目の治療を岡山大病院で実施している。
今回の国際共同研究は、ICONT事業と連携して実施されるもので、現在取り組まれている「IL-12遺伝子治療」と、前立腺癌の「SNPs解析」の二つのシーズを中心に、東アジアで医師主導の探索的臨床研究(トランスレーショナルリサーチ)を推進していく。
参加施設は、日本は北里大、中国は北京大学と北京腫瘍病院、浙江大学、韓国が韓国カソリック大学と韓国前立腺バンク、シンガポールがシンガポール総合病院。岡山大は、北里大と自殺遺伝子であるHSV-tk遺伝子発現アデノウイルスベクターを利用したアジュバント療法の共同研究を行っており、また中国、韓国、シンガポールの医療研究機関とも長年の交流を持っていることから、今回の国際共同研究参加となった。
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研究のマップロードとしては、SNPs解析については、岡山大の複数SNPs同時解析を韓国で検証し、その後、中国、シンガポールで前向きに検証する。IL-12遺伝子治療に関しては、進行性前立腺癌に対し岡山大が実施した後、中国の2施設でも実施。
その段階で、SNPs解析データが提示されてくることから、臨床的リスクと遺伝的リスクによりハイリスク前立腺癌を同定した上で、アジュバント療法としてのIL-12遺伝子治療を中国1施設、シンガポールの1施設で実施する。アジュバント療法の評価に関しては、北里大のHSV-tk遺伝子治療の解析データを利用する。
研究は7月1日から3年間の計画で実施されるが、まずIL-12遺伝子治療を行うに当たっての、各国に合わせたプロトコール作成を行っていく。作成に当たっては、北里大が支援を行う。
会見で公文氏は国際共同研究について、「あくまでも最終目標は、東アジア科学技術コミュニティーを構築し、それを、アジアにおける医師主導のトランスレーショナルリサーチ展開のためのプラットフォームにすること」を強調すると共に、「今回は、その目標実現に向けた第一歩で、実施可能なシーズに取り組み、着実に成果を上げることで、その基礎を作っていくためのモデル事業」だと、位置づけを語った。さらに、「ここでの研究成果は、前立腺癌だけでなく、多くの癌に応用できることから、アジア人のための創薬が可能となる」と、その意義も説明した。
また、この国際共同研究は、今年度の科学技術振興調整費「国際共同研究の推進」に採択されいてる。公文氏は「こうした国の支援がなくても、実施を予定していた。しかし、支援を受けたことで、今回の計画が加速し、さらに機動力を持って取り組める」とした。
今後の展開については、ICONT事業の成果である新規癌抑制遺伝子REICによる遺伝子治療に関し、既に5月1日に臨床研究実施に向けた計画の学内審査委員会申請を済ませ、2年後に日本での臨床研究開始を予定している。
公文氏は、「REIC遺伝子治療は、前立腺癌の根治、腎臓癌、肝臓癌、さらに悪性中皮腫の治療にも期待されている。国際共同研究を実施するに当たって、次のシーズもメドがついている。継続的に事業を展開し、東アジアのプラットフォーム構築を実現させたい」と強い意欲を示した。
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2006年12月18日
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