温暖化が進むと、2100年にはデング熱を媒介するネッタイシマカが神奈川県、千葉県南部まで北上する‐‐との予測が、「温暖化影響総合予測プロジェクト」から発表された。同じように蚊が媒介するマラリアも危惧されるところだが、マラリアについては媒介する蚊の分布が限られることに加え、現在の医療体制からいって「再流行の可能性は低い」としている。
プロジェクトには、14大学をはじめとする研究機関が参加。環境省の研究資金をもとに、2005年から3年間研究を行ってきた。研究では、1990年を起点に、日本の平均気温が2030年には1.9度、2100年には4.8度上昇するとのモデルを前提に、健康分野をはじめ水資源や農業、沿岸域などの分野ごとに影響を予測した。
その結果、デング熱を媒介するネッタイシマカは1月の平均気温が10℃以上の地域に分布する可能性があるとし、2100年には、九州南部とその東西の海岸線、高知県、紀伊半島南部、静岡県、神奈川県、千葉県南部地域に拡大すると予測した。
デング熱に対するワクチンはないことから、早期診断、媒介蚊、その幼虫の駆除、刺されづらい服装などが対策になるとしている。
一方、マラリアは再流行の可能性が低いとされた。その理由としては、媒介するコガタハマダラカの飛翔可能距離が短く、生息地域がごく限られ、マラリア原虫とコガタハマダラカの最適発育温度を超える温暖化が進む可能性があることに加え、治療体制が整っていることが挙げられた。
また、熱中症など熱ストレスによる死亡率は、気温上昇に伴って高まり、2100年までに205倍以上に拡大すると予測した。