主要な大手ドラッグストアの決算報告からは、積極的な出店に伴う業績拡大の様子がうかがえる。それと同時に各社がICT(情報通信技術)を積極的に活用し、顧客との接点を今後強化していこうとする姿勢も見て取れる。
ドラッグストア業界は、同業他社の積極的な出店やEC拡大等による購買チャネルの多様化が、今後も激しくなることが予想される。
こうした中で、顧客一人ひとりのニーズに応えられる仕組みを構築し、実店舗と顧客との距離を縮め、地域密着型ドラッグストアとして付加価値の高い運営を推進するため、ICTを積極的に活用していこうというもの。またICTの活用は、店舗オペレーションの効率化の観点からも不可欠な要素となっている。
スギ薬局がメドピアグループと連携して進めているスマホアプリの「スギサポ」は、従来の店頭販売により蓄積された購買履歴や調剤データに加えて、新たに「スギサポ」により蓄積されていくデータを利活用することで顧客一人ひとりの趣味嗜好や生活習慣、健康課題に合わせた店頭サービスやミールデリバリーサービス、そのほか生活習慣改善プログラム等を効果的に提供していくことを目指したもの。年間延べ2億人以上が来店するという全国1100店舗以上のスギ薬局を背景に、差別化につなげていく。
マツモトキヨシホールディングスもITを活用することにより、生活者のライフスタイルの変化や嗜好・ニーズを的確に捉え、一人ひとりの顧客との距離を縮め、より深くつながれるようデジタルマーケティング基盤の強化に取り組んでいる。同社では、6000万を超える顧客との接点を活用した分析力をさらに高めて、独自商品の開発やメーカーへのマーケティング支援推進、マーケティングノウハウそのものをサービス化するなど、利益につながるデジタルマーケティングを推進していく考えだ。
キリン堂ホールディングスは、昨年秋に自社電子マネー付きポイントカード「KiRiCa」をグループ全店(調剤薬局等一部を除く)に導入したが、今後は顧客との接点を増やし関係性を強化する目的で、今年夏頃に自社アプリをリリースし、IT活用を推進する計画という。
現在、ドラッグストア業界団体(JACDS)が一丸となって推進している事業の一つに、生活者のあらゆる健康や美容の相談に対応し、セルフメディケーション推進を支援する「街のハブステーション構想」がある。
顧客・患者が何を望んでいるか、何を期待しているかを把握し、それに的確に応えていく。その実現にはビッグデータの収集と活用は欠かせない。専門的な人材の確保と育成と共に、顧客データの活用にもドラッグストア各社がしのぎを削る時代となってきた。