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岐路に立つ6年制薬学教育

2019年05月24日 (金)

 6年制薬学教育が岐路に立たされている。国の財政を預かる財務省の歳出改革部会において大学等の高等教育にかかる経済負担軽減を議論する中で、基本的な教育の質を保証できていない大学があるとして、6年制薬学部の大学ごとの卒業率や薬剤師国家試験合格率が例示された。

 具体的には、6年間で国家試験に合格した学生の割合が19%から100%まで大きな差があると指摘。「高等教育を修めたにもかかわらず、将来必要となる十分な知識や技術などの成果を身につけられない例がある現状は問題」と6年制薬学教育を問題視した上で、「教育成果を学生が身につけられない大学は、国民の税負担で温存しないよう経済負担軽減の対象除外とすることを徹底すべき」と注文を付けたのである。

 同部会は、10月の消費税率引き上げにより、来年度から予定される大学等の高等教育にかかる経済負担の軽減について検討することが目的。消費税対応という名目ではあるが、予算編成上の課題を検討する財務省から、教育成果を学生が身につけられない大学の例として薬科大学・薬学部が挙げられたことは異例と言える。

 かねて6年制薬学教育の問題点は指摘されてきたが、薬学教育評価機構による6年制薬学教育第三者評価では、薬剤師国家試験対策への偏重や国試のストレート合格率の低さ、卒業研究の軽視等が例年指摘され、昨年開催された「新薬剤師養成問題懇談会」(新六者懇)でも質への懸念が示された。それにとどまらず、将来の薬学を支える博士課程進学者の減少も大きな課題として浮上。こうした中での財政当局からの警告である。

 6年制薬学教育は、臨床に強い薬剤師の養成という意味で一定の成果を出したことは間違いない。しかし、ここへ来て、当初から指摘されていた研究力の低下や薬学部新設ラッシュによる学力低下等の問題が一気に吹き出してきた感がある。

 最近では、国公立大学の一部で4年制課程を廃止し、6年制に一本化する動きが出てきている。研究が求められている国公立大学薬学部での動きではあるが、研究ができる薬剤師、臨床が分かる研究者というコンセプトのもと、「研究重視」の姿勢が学生の支持を得ている点は注目される動きと言えるだろう。

 多数を占める私立薬系大学でも、質の高い薬剤師の養成が一層求められている中、卒業研究を重視して、国家試験対策に追われる現状の課題を解決しなければ、まさに何のために高等教育を修めたのかという財務省の指摘に反論は難しくなる。

 今回の問題意識は、あくまでも消費税対応の経済負担軽減の観点からだが、その先には教育成果が出せない大学の補助金削減という議論につながる可能性もある。大学関係者が率先して課題解決に取り組むべき待ったなしの時期に来ている。




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