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臨床研究結果は全て公開を

2019年05月31日 (金)

 医薬品の臨床研究の結果を全て公開し、人類の財産として共有する取り組みが、世界的に進んでいる。多くの製薬企業はこの動きに対応し情報を公開するようになってきたが、アカデミアの対応は遅れているようだ。

 医薬品の効果を検証した臨床研究結果のうち、ポジティブなデータだけが公開され、仮説を立証できなかったネガティブなデータが公開されなければ、その医薬品の効果を過剰に評価してしまい、臨床現場で誤った判断が誘導される可能性がある。ポジティブデータのみが強調される状況下では、エビデンスを重視すればするほどその医薬品の真の実力を正しく評価できなくなるなど、矛盾した事態に陥ってしまう。

 こうした課題を解決するため、これまでポジティブ、ネガティブに関わらず医薬品の臨床研究結果を全て公開する取り組みが、世界的に進んできた。

 その前段階として2004年以降、臨床研究の概要を該当ウェブサイトに登録する仕組みが確立された。米国の「クリニカルトライアルズ・ドット・ガブ」が有名だ。日本でも、大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)や日本医薬情報センター(JAPIC)が臨床研究登録サイトを整備。これらのサイトを網羅して検索できるポータルサイトも08年に立ち上がった。臨床研究法の附帯決議を受けて新設された国の公的なデータベース「臨床研究実施計画・研究概要公開システム」(JRCT)も昨年から登録可能な状況になっている。

 臨床研究の概要を登録する仕組みが整備される一方、結果の公開については研究者の自主的な判断に委ねられていたが、近年は欧米で義務化され、結果の公開が進んだ。専門家の報告によると現在、終了した臨床研究のうち米国では約4割、欧州では約6割の結果が公開されるようになった。しかし、内訳を解析すると、公開しているのは製薬企業が多く、アカデミアによる結果の公開は遅れている。米国の有名大学でも、結果を公開しないところが少なくないという。

 臨床研究でネガティブな結果が出た場合、アカデミアの研究者は有名雑誌への論文掲載が見込めないとして、結果の公開に費用と手間を割きづらい。この課題を解決するには、研究者への意識啓蒙だけにとどまらず、ネガティブデータを公開した研究者を適切に評価するアカデミアや社会の環境整備が求められる。

 このほか、「ネガティブデータを診療ガイドラインに掲載してはどうか」との指摘もある。医薬品が疾患の治療に効果を発揮するというポジティブデータは重要だが、個々の患者に応じた薬物療法を考える上で、効果を発揮しないというネガティブデータも貴重な情報になる。こうしたデータが掲載されるようになれば、研究者の意識やアカデミア内での評価も変わる可能性がある。




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