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「薬剤師余剰時代」を考える

2019年06月07日 (金)

 厚生労働省の研究班が薬剤師の需給動向に関する調査・研究結果に関する報告書をまとめた。薬剤師の業務が現在と変わらないことを前提に推計した場合、今後数年は需要と供給が均衡する状況が続くものの、長期的には供給が需要を上回ると予測。このままだと薬剤師は余る状況になると見通した。

 あくまでも今後の処方箋枚数、病床数の変動に関する推計などをもとにした単純推計だが、今後より対物業務の効率化が図られていく状況で、今までと変わらない業務に従事していると、薬剤師のニーズは増えないことを注意喚起している。

 報告書では「薬剤師のニーズは業務への取り組み次第で大きく変わってくる」ともしている。厚労省の「患者のための薬局ビジョン」に示されているような在宅業務をはじめ、服薬状況の一元管理、健康サポート薬局のようなセルフメディケーション関連業務にも取り組み、対人業務を充実させるための努力が必要となる。

 一方、供給面では、「今後、現在の水準以上に薬剤師養成が必要となる状況は考えにくい」と予測した。大学進学者数が今後2割程度減少することを前提とし、直近3年間の合格者の平均である9800人も2割程度減ると仮定して推計したものだ。

 6年間で卒業して国家試験に合格する「ストレート合格者」が大学によって大きく異なるなど、予測が難しい面はあるが、人口が減少していく中で、「今後も6年制の入学定員が増加し続けると、薬剤師供給の増加要因となり得る」とまで指摘している。「これ以上の新設は不要」とのメッセージだと受け取った方が良い。

 ただ、今回の調査では地域偏在が考慮されていない。地域によっては授業料の安い国公立大学で薬学部を新設し、学生が定着するような条件を課すなどして、人員不足の解消につなげたいところもあるだろう。厚労省には、今回の結果を踏まえ、より詳細な分析を行ってもらいたい。

 文部科学省は、参議院厚生労働委員会で、医学部・歯学部にかけられている入学定員の制限を薬科大学・薬学部にも適用することについて、「厚労省の薬剤師需給に関する検討の動向を踏まえ、適切に対応していきたい」との考えを示しているが、今回の予測結果だけでは、定員抑制に向けた動きが取りづらいことが予想される。

 既に一部の私大では、自主的に入学定員を削減するところも出てきたようだが、こうした取り組みはさらに進める必要がある。大きな変革期の中にいる薬剤師である。大学関係者も含め、いま求められていることを着実に実行に移し、明るい展望を開いてもらいたい。



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