20年という時の流れを経て、その業界規模は3倍近くに拡大し、店舗総数も増加を継続した――。ドラッグストア業界のことである。20年前は約2兆5000億だった市場は2018年度現在、7兆2000億円を超える規模となり、店舗総数も2万店の大台を突破している。この飛躍的な発展を牽引してきたのが日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)であるのは間違いない。JACDSは今年、設立20周年の節目を迎えている。
JACDS設立のルーツは、1996年に実施された通商産業省(現経済産業省)のドラッグストア調査研究になる。調査がまとまったことを受け、ドラッグストア産業化推進実行委員会が発足。同委員会がドラッグストア産業化推進センターとなって活動を重ね、協会設立の気運が高まり、96年6月16日にドラッグストア経営者らの手によってJACDSが設立された。
設立以降、ドラッグストア業界を力強く牽引してきたJACDSだが、全てが順風満帆だったわけではない。薬剤師不在問題、一般用医薬品販売の規制緩和、登録販売者制度の導入、医薬品のネット販売、調剤ポイントなど、いくつもの問題や課題、対応を迫られる事案が生じた。
そうした時にもJACDSは、常に真摯に向き合ってきた。「ドラッグストアを社会に定着させたい」との願いがなせた業かもしれないが、不断の努力があって今があるのは確かだ。
11年には、JACDSが主催する大イベント「ドラッグストアショー」の会期初日に東日本大震災が発生。2日目、3日目を中止せざるを得なかった。この時も、JACDSは翌日から支援活動をスタートさせ、義援金、物資支援、薬剤師派遣などを全国のドラッグストアの協力を得て実施している。震災以降の大地震などの有事への対応は非常に迅速であり、高い評価を得ている。
20周年を迎えたJACDSは、次なる大きな目標として、「2025年、3万店舗、10兆円産業化」を掲げ、その実現に向けて邁進している。その先頭に立つべく第5代JACDS会長に選ばれたのが池野隆光氏(ウエルシアホールディングス会長)である。池野会長は「JACDSが成長すればするほど、社会的責任の達成を期待される」とし、尊敬される企業集団を目指す考えを打ち出した。
少子高齢化や人口減少が進展している中、健康寿命延伸やセルフメディケーション推進などにおいて、ドラッグストアが果たす役割は非常に大きいものとなっている。激変する時代に次の20年を明確に見通すことは難しいが、現在ドラッグストアに求められている役割を的確に担い、地域生活者の期待に応え続けていけば、地域における“なくてはならない存在”として、真っ先に「ドラッグストア」の名前が挙がることにつながるのではないだろうか。