大阪府吹田市、摂津市などが整備を進める北大阪医療産業都市(健都)の中核を担う国立循環器病研究センター(国循)が新築移転し、7月1日にオープンする。わが国の死因の4分の1を占める脳卒中や心臓病など循環器系疾患に対し、国循は高度専門医療に取り組む世界有数のナショナルセンターとして、最先端医療や医療技術の開発で世界をリードすることを基本理念として掲げる。
今回の移転による国循の最大の強みとなるのが、新たに設置されたオープンイノベーションセンター(OIC)である。人工心臓や人工心肺、巨大脳動脈瘤治療用ステントなど、国循の研究所で開発された医療機器の臨床試験を病院で行う橋渡し役を担っていた研究基盤開発センターを発展的に解消、改組したものだ。
OICでは、次世代医療・ヘルスケアを実現するため必要な知識を結集させ、リソースを活用できる仕組みを構築した。具体的に、産学連携を協力に推進するための産学連携本部を新設。さらに「オープンイノベーションラボ」を整備し、多くの企業との共同研究を一つ屋根のもとに展開していく。「サイエンスカフェ」も設置し、企業間の研究者同士の交流も図っていく。
革新的な技術・製品を生み出すためには、企業・大学・研究機関の知識・技術の結集が必要になる。OICへの参画には、国循が実施すべき研究課題を公募し、最も適した企業・研究機関が選ばれる。参画企業や研究機関には、国循のネットワークを最大限に生かした研究体制とプロジェクト運営の支援が受けられるほか、大型実験動物施設、バイオバンク、循環器病統合情報センターなどの設備を優先的に活用できる。従来の病院や大学単体では不可能だった規模の研究も視野に入る。
今後、健都では、国循を中心としたオープンイノベーションに連動したエリアの産業活性化による国際級の複合医療産業拠点(医療クラスター)の形成と共に、循環器疾患分野の予防・医療・研究で世界をリードする地域を目指していく考え。
隣接する「健都イノベーションパーク」では、産学官民が連携する医療イノベーション拠点の形成を図るため企業や大学の研究機関、サテライトオフィスの進出用地を確保。既にニプロの研究施設の進出や国立健康・栄養研究所の移転も決定している。
国循が立地するJR岸辺駅の北エリア付近には、市立吹田市民病院のほか、生活利便機能、健康増進機能など、健康に向けた行動変容を促すための複合商業施設もオープンする。
健都全域が、国循と連携して循環器病の予防医療や健康づくりの取り組みを推進し、循環器病予防の象徴と呼ばれる「健康・医療のまちづくり」を進めていくとしている。今後、多くのエビデンスを集積し、健康寿命延伸をリードするモデル都市としての成果に期待したい。