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【PASN】「顧みられない病気」の新薬開発加速”インフラ整い活動本格化

2008年07月01日 (火)

 顧みられない病気のための新薬開発に向け、天然物からの化合物スクリーニングを目指すアジア太平洋地域ネットワーク「PASN(Pan-Asian Screening Network for New Drugs for Neglected Diseases from Natural Substances)」の活動が本格的に動き出した。天然物資源が豊富なアジア太平洋地域7カ国の研究施設が連携することで、顧みられない病気のための新薬開発を加速させるのが狙い。立ち上げから2年が経過し、ようやくスクリーニング方法の標準化や研究者の訓練、研究協力のための会議開催など、包括的なネットワークのインフラが整い始めてきた。今後、PASNでは、多くのリード化合物を非臨床に橋渡しすることで、新薬開発のゴールに向けた活動を強化していく予定だ。

 PASNは2006年5月、笹川平和財団の助成と非営利団体「DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気のための新薬イニシアティブ)」の支援によって立ち上げられた。北里研究所と化合物スクリーニングの共同研究を進めてきたDNDiが、アジア地域のネットワーク化を提案し、実現したものだ。PASNの会長には、日本から北里生命科学研究所所長の山田陽城氏が就いている。

 現在、PASNには、北里研究所が参加する日本をはじめ、中国、韓国、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、インドのアジア太平洋地域7カ国から主な研究施設が集結。特に、途上国の貧しい人々が多く罹患するアフリカ睡眠病とリーシュマニア病をターゲットに、スクリーニング分野での研究協力を推進してきた。

 PASNの目的は、研究者のトレーニング、化合物スクリーニングの方法論の標準化、天然物を研究するグループをつなぐこと。そのため、ワークショップや各種研修、マニュアル作成、会議などを通じて情報交換を進めているところだ。

 その中でも、PASNに参加するアジアの研究者が一堂に介する年1回の年次会議は、設立時に東京で初会合が行われて以来、3回にわたって開催され、顧みられない病気のための新薬開発戦略をめぐって、議論を深めてきた。

 PASNは現在、アフリカ睡眠病とリーシュマニア病に焦点を当てた化合物スクリーニングに向け、ネットワークを強固にしていく段階にある。特にアジア地域は、微生物、植物、海洋資源など、天然物が豊富に存在する利点を持っている。

 DNDiのシニアプロジェクトマネジャーで、PASNの責任者を務めるロバート・ドン氏は、「天然物の研究を積極的に行っている施設が手を結び合うことで、さらに(途上国の患者に新薬を届けるという)ゴールが近づく」と期待を語っている。

 既に、PASNが進める研究者のトレーニングに関しては、スイス熱帯研究所に研究員を派遣するなど、具体的な取り組みが軌道に乗り始めてきた。研究施設における標準マニュアルの使用、研究効率化に向けた情報共有も進んできている。

 こうした取り組みを通じて、PASNは、スクリーニング技術の標準化と共に、天然物研究者のネットワークを並行して立ち上げ、スクリーニング技術と人材の包括的なネットワークを目指す考えだ。

 最終的には、アフリカ睡眠病とリーシュマニア病のみならず、マラリアやデング熱など、他の疾患に対象を広げ、化合物の探索から最適なリード化合物の決定までをカバーできるコンソーシアムへの発展が視野にある。リード化合物が決定した後は、DNDiの世界的なバーチャルネットワークを活用し、非臨床試験、臨床試験へと橋渡ししていくスキームが描かれている。そのため、PASNにとっては、いかに多くのリード化合物を見出せるかが勝負になりそうだ。

 これまで、PASNでの取り組みは、活動のインフラ作りが中心だったが、研究者のトレーニングとスクリーニングアッセイ系の確立が進んだことで、いよいよ本来の目的の「顧みられない病気の新薬開発」に向けた、化合物スクリーニングが本格的に開始できる段階に入った。

 ドン氏は、「PASNは非常に成功しているネットワーク」と高く評価した上で、「基礎研究から非臨床に橋渡しする化合物がないというギャップを埋めるため、今までなかった顧みられない病気のトランスレーショナルリサーチを目指していきたい」と意気込みを語っている。

 PASNの会長を務める山田氏は、「PASNを発展させるためには、産官学がどのようにスクラムを組めるかが焦点になる」とした上で、「今年はアフリカ開発会議が日本で開かれ、アフリカ支援の重要性に注目が集まっている。そういった中で、顧みられない病気の新薬開発を推進することは、真の国際貢献としても非常に大事なことだ」と強調し、多方面からの協力を訴えている。



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