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6月27日に総務省が発表した5月の全国消費者物価指数(CPI:2005年を100とする)では、総合指数が101・7となり、前年同月より1・3%上昇した。また、生鮮食品を除く総合指数も101・6で、前年同月より1・5%上昇するなど、8カ月連続の上昇となり、物価の大幅な上昇傾向を示す結果となった。
昨年夏場から徐々に進行してきた原油先物取引価格の高騰に伴い、今やガソリンの店頭小売価格も全国各地で史上最高値を更新し、異常な状況になっている。既に、石油製品の価格高騰が話題になってから1年以上が経過し、長期化の様相を呈している。
そうなると、物流など輸送コストのアップにも拍車がかかり、必然的に物価が高騰していく。食料品の度重なる値上げなどは、既に家計を直撃しつつある。物価上昇と不況が同時進行する「スタグフレーション」が現実味を帯びてきた。
翻って、総合指数の10大費目の「保健・医療」は、前年同月比マイナス0・5%と下落。さらに、中分類の「医薬品・健康保持用摂取品」も前年同月比マイナス0・9%と、健康関連分野はこれまでのところ、一連の物価上昇とは逆の傾向を示している。医薬品業界が物価上昇と別次元に位置しているとはいい難く、早晩影響を受けることになるかもしれない。
特に医薬品小売業では、ドラッグストアの動向がその鍵を握る。ドラッグストアの黎明期には、セルフ販売を主体に、品揃えと安さで消費者マインドを刺激し、業態として認知されてきた。
現在、全国約1万5000店、6兆円前後の市場規模で、2010年には3万店、10兆円産業への成長拡大も予測されている。その一方で、大量出店を進める大手ドラッグストアの多くが、規模を背景にメーカー等から安い原価を引き出すことで、店頭売価を引き下げて集客するという手法をとってきた。
しかし、原油価格高騰の長期化により、食品メーカーなどを中心に原材料価格の高騰分を企業努力で吸収できず、製品価格への転嫁を余儀なくされている状況にある。さらに事態が長引けば、医薬品メーカーにも同様の動きが出てくる可能性は否定できない。
既に、スケールメリットだけで条件提示を行うことをやめるメーカーも出ているとも聞く。ドラッグストア業界は、販売価格にオンコストする困難さを初めて経験することになりそうだ。
あるドラッグストア経営者は、「今の勢力図を無視していいほど激変がある」と業界を見通す。今も店舗投資で高速展開し続ける企業はさらに借入金の増加を招く。金利引き上げで景気が冷え込む以上に、投機マネーによる物価上昇で、景気が冷え込む展開が予測される中、金利引き上げも近いとみる向きもある。結果、高速展開によって、財務体質を弱める企業も少なくないという。
加えて、来年4月に完全施行される改正薬事法以降、本格的な異業種参入も見据えて、従来通りの護送船団のような成長が望めるのかは未知数ということになる。ジワジワと押し寄せる物価上昇気運の中で、従来通りの価格提供を全てのドラッグストアが展開していくことは困難になりつつある。従来からの販売姿勢の根本的な転換を余儀なくされる時期は、それほど遠くなさそうだ。
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