厚生労働省保険局長 濱谷浩樹
わが国は国民皆保険制度等を基盤として、世界最高水準の長寿社会を実現し、国民の健康の維持・増進を図ってきましたが、急速な人口の少子高齢化と人口減少、世帯構成の変容など、医療を取り巻く状況は大きく変化しています。今後の社会経済の動向を見据え、医療保険制度がしっかりと機能し、全ての国民に良質で効率的な医療が提供されるよう、不断の取り組みを続けていくことが必要です。
今後を展望すると、団塊世代が75歳以上となる2025年や、団塊ジュニア世代が高齢期を迎え、支え手の中心となる生産年齢人口の減少が加速する40年頃を見据えた対応が必要です。
昨年9月に、「全世代型社会保障検討会議」が設置され、年末には中間報告を取りまとめました。この中間報告をもとに関係審議会等での議論を本格化し、今夏の最終報告に向け、検討を進めます。
20年度は診療報酬改定が行われます。今回の改定では、医師等の働き方改革の推進や、患者・国民に安心・安全で質の高い医療を実現するための取り組みや、医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進を進めつつ、効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上を図ります。
近年、国民の健康寿命が延び、医療に対する国民のニーズが多様化する中で、これまで以上に保険者事務の適正な実施と予防・健康づくりに資する保健事業の充実が求められています。また、医療機関や保険者における情報化の推進により、良質な医療をより効率的に提供することが求められています。
このため、昨年5月に成立した「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」では、オンライン資格確認の導入と普及のための医療情報化支援基金の創設、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施などの措置を講じており、これらの円滑な施行に取り組みます。
また、人生百年時代を迎える中で予防・健康づくりを推進していくことが重要です。このため、保険者における予防・健康づくり等の取り組みを促すため、国民健康保険の保険者努力支援制度の20年度の評価指標で特定健診・特定保健指導や糖尿病等の重症化予防等の、予防・健康づくりに関する評価指標の配点割合を高め、配分基準のメリハリを強化すると共に、予算規模を拡充し、保険者インセンティブの抜本的強化を図ります。