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特許庁と経済産業省は、知財に関する政策提言「イノベーション促進に向けた新知財政策”グローバル・インフラストラクチャーとしての知財システムの構築に向けて」を公表した。提言では、知的財産の基本理念であるプロパテント(特許重視)政策を、イノベーション促進の観点からさらに強化するため、特許審査の効率化・迅速化をはじめ、国際的な制度調和の推進、知財の視点を取り入れた研究開発などを行うべきとしている。
まとめられた政策提言は、▽「仮想的な世界特許庁」の構築▽出願人の多様なニーズに応じた柔軟な審査体制構築▽国際的な制度調和の推進▽途上国による知財制度活用の促進▽透明で予見性の高い特許審査メカニズムの構築▽シームレスな(継ぎ目のない)検索環境の実現▽研究開発政策と知財政策との連携▽知財プロデューサー派遣事業創設””など13項目に及ぶ。
「仮想的な世界特許庁」構想は、経済のグローバル化が進む中、一つの発明が効率的にグローバルな知財として保護されることが重要なことから、▽実体法から審査業務など様々なレベルで国際調和を進め出願者の予見性を高め▽特許庁間の審査ワークシェアリングを進めることで効率性を高める””ことが必要だとして提案された。
具体的には、日米欧3局や日米欧韓中5カ国の特許庁の枠組みを拡大し、世界知的所有機関(WIPO)を中心として、世界各国との間で審査協力のネットワークく構築を目指すと共に、情報システムによる書類の電子交換を行えるようにするなど、国際的なワークシェアリングを支えるITインフラ整備の必要性を挙げた。
また提言では、特許出願人の多様なニーズに応えるため、早期審査制度を拡充するなどし、迅速かつ柔軟な審査体制を構築すべきと指摘。具体的には、特許庁が実施している現行の「通常審査制度」「早期審査制度」に加え、「スーパー早期審査制度」を創設(10月から施行開始)し、制度の充実を図る。スーパー早期審査制度の導入により、早期審査で203カ月かかっていた審査期間を2週間から1カ月程度に短縮し、より早い審査を望む出願人のニーズに応えていく。
また、知的財産システムのグローバル化が進む中、国際的な制度調和を進める必要性も強調。日米欧の間で実体的な制度調和はとれていないものの、日本の特許法は米国と欧州の中間に位置しているため、中庸な制度を有する日本の特徴を生かして、日本が制度調和の議論をリードし、米国と欧州の制度面の歩み寄りを働きかけるべきとした。
一方、研究開発と知的財産政策を連携させ、「知財の目」で研究開発を見る必要性も指摘。京都大学の山中伸弥教授らの研究チームが開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)を例に挙げ、「研究開発の過程においては、論文の競争と知財の競争が重なり合いながら起こっており、どちらの競争にも勝利しなければ、世界をリードしていくことはできない」とし、研究開発成果と経済・社会とをつなぐための「知財の目」が研究開発の入り口から必要になるとした。
そのため、研究開発を知財の視点で捉えられる人材(知財プロデューサー)を研究開発の場に派遣し、産学連携から出てきた様々な研究を、産業化という一つの出口に集約していく仕組み作りを求めた。
また、研究開発の場には「継続的に知財の専門家が配置されることが望ましい」とし、人材育成の必要性も強調。ポスドクなどを知財プロデューサーとして育成していくことを提案している。
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