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顕在化する複合リスクへの対応を

2020年08月28日 (金)

 新型コロナウイルス感染症との闘いは、長丁場になることが必至となった。今は、マスク着用や手指消毒の徹底、3密の回避など社会全体での感染予防と、医療現場においては患者の重症化、死亡の阻止に注力している。主な対応の実態は、医療関係をはじめ、介護・福祉、保育などを担っている従事者、ライフライン等社会インフラの維持、生活必需品の物流に取り組んでいる人々の献身的な努力に頼っているのが現状だ。

 一方で、リーマンショックよりも落ち込むと予想されている経済の回復にも着手されており、財政支援による雇用確保のほか、最も影響を受けた業界の一つである旅行業界をターゲットとした「GoToトラベルキャンペーン」などが始まっている。感染防止と経済活動という、ある意味で相反する施策のバランスを取って社会を動かしていくことが不可欠な時代となった。

 「ウィズコロナ時代」「アフターコロナ時代」におけるリスクファクターは、この二つだけではない。大地震や台風、火山噴火などが同時に起きる複合自然災害に対しては、過去の経験から多くを学んでいてある程度対応できるが、今回の厄災原因は新型コロナウイルスである。

 同じウイルス感染症とは言え、夏場に終息した100年前のインフルエンザとも事情は大きく異なる。この難敵と闘っていく上で、懸念される因子がいくつも潜んでおり、一部は既に出現して人々を脅かしている。

 経済に関しては、産業界全体における雇用確保問題のほか、様々な業界の企業が業績悪化も一因とする事業整理へ動き始めている。薬業界では24日、武田薬品がOTC医薬品などのコンシューマーヘルスケア事業を米ファンドに売却したことが話題になった。今後も数多の企業において事業整理が行われていくことが予想される。

 医療、経済と同等に大きなリスクは、人と人との関係である。実際に関連する差別、偏見やいじめの事例が出てきている。未知のウイルスに対する不安と先行き不透明な現実に対する本能的な反応とも捉えられるが、当事者にとっては深刻な事態である。

 25日には、萩生田光一文部科学大臣が差別と偏見防止に向けた緊急メッセージを発信した。メッセージでは、児童生徒等の学生、教職員等の学校関係者、保護者・地域関係者の3方面にそれぞれお願いをしている。強制力はないものの、教育担当大臣が国民にお願いしなければならないほど、現場では逼迫した事態なのであろうと想像できる。

 医療体制の安定確保、ワクチンや治療薬の開発・供給は当然必需だが、その他にも社会を混乱に陥れる複合的なリスクファクターも視野に捉えながら、新型コロナウイルス感染症との長期戦に挑み、勝利するためにあらゆる知恵を絞って最善策を打ち出し、一丸となって取り組むことが求められている。



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