薬事・食品衛生審議会薬事分科会は3日、多発性骨髄腫の適応で藤本製薬が承認申請しているサリドマイド製剤(製品名:サレドカプセル100)について審議し、承認を了承した。正式に承認されるのは10月中旬の見込み。胎児の奇形を引き起こす副作用が問題化して1962年に販売中止以来、46年ぶりに医療現場に再登場する。承認の前提となる安全管理対策については、9月30日の同審議会医薬品等安全対策部会で「サリドマイド製剤安全管理基準書」が了承されている。
同剤は、現在、多発性骨髄腫の適応で17カ国で再承認されており、国内でも個人輸入する例が増え、患者からの承認要望も強かった。薬事分科会では、承認に当たり催奇形性の薬害を踏まえ、▽安全管理手順の適正な遵守▽文書による説明と同意▽全症例を対象とした使用成績調査と製造販売後臨床試験による安全性及び有効性に関するデータの収集――が条件とされた。
承認の前提となった安全管理対策は、医薬品等安全対策部会が藤本製薬の原案をもとにまめた「安全管理基準書」等が了承されている。基準書では使用できる医療機関などを限定し、流通から処方まで藤本製薬が一元管理するとした。
多発性骨髄腫の患者1万300001万4000人のうち、再発性・難治性の患者が同剤の対象となる。
安全管理策のとりまとめに関わった厚生労働省医薬食品局安全対策課森和彦課長は「多発性骨髄腫患者からの切実な要望を受け、早く承認しなければならないとの認識を、関係者間で共有できた」としている。
同剤の薬害被害者団体「いしずえ」常務理事で、厚労省の安全管理策の検討会に委員として参加してきた増山ゆかり氏は、「サリドマイドは必要な薬との認識を持っており、承認すること自体には異論はなかった。安全管理を考えれば、個人輸入に頼っている現状から脱し、きちんとした手続きを経て承認された方が良い」と述べている。
特発性肺線維症治療薬も了承
また、この日の薬事分科会では、特発性肺線維症の初の治療薬である塩野義製薬の「ピレスパ錠200mg(グラスピア錠から名称変更)」、佐藤製薬の「タイロゲン筋注用0・9mg」も審議、了承された。
「ピレスパ錠200mg」の有効成分はピルフェニドン。適応となる特発性肺線維症は肺の硬化により肺活量が減少し、平均生存期間が約2年半の重篤な疾患で、国の難病に指定されている。
同剤は塩野義が行った第III相試験で、投与群はプラセボ投与群と比較して、肺活量の減少を有意に抑制する効果が認められた。ただし、半数以上の患者に光線過敏症の副作用が見られたため、使用に当たっては日常的に日光を避けるなど、患者への注意や副作用への理解を図ることが必要としている。希少疾病用医薬品に指定され、全例調査が承認条件。
「タイロゲン筋注用0・9mg」の有効成分はヒトチロトロピンアルファ(遺伝子組み換え)。効能効果は、分化型甲状腺癌で甲状腺の全摘または準全摘術を施行された患者の甲状腺機能を測定するための、放射性ヨウ素シンチグラフィーと血清サイログロブリン(Tg)試験の併用またはTg試験単独による診断の補助。希少疾病用医薬品に指定され、全例調査が承認条件。