シンポジウムの主な話題
12月3日(木)17:40~19:40 第3会場
座長:
湯地 晃一郎(東京大学医科学研究所)
森豊 隆志(東京大学医学部附属病院臨床研究推進センター)
◇リアルワールドデータを用いた臨床薬理学
中島 直樹(九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター)
◇リアルワールドデータを用いた臨床疫学研究
康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学)
◇ナショナルレセプトデータベースを用いた医薬品の有効性と安全性評価
頭金 正博(名古屋市立大学大学院薬学研究科医薬品安全性評価学分野)
◇レセプトデータべースを用いた医薬品の安全性評価に関する国際共同研究
佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部)
近年、リアルワールドデータ(RWD)やリアルワールドエビデンス(RWE)の利活用が注目を集めている。RWDは、電子カルテやレセプト、患者登録・レジストリの情報など日常診療下で収集蓄積されるデータ全般を指し、その利活用分野は疫学、アウトカム、医療技術評価、医療経済など多岐に渡っている。RWDを用いた研究から導き出された事象はRWEと呼ばれ、その創出は医薬品開発に大きく貢献すると期待されている。各演者が臨床薬理学分野におけるRWDの利活用や疫学研究、RWE創出の実例を紹介する。
中島直樹氏(九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター)は、医療ビッグデータを活用した研究を推進するには、国民における健康医療データ2次利活用の必要性の認識拡大、それに必要な個人情報保護のための社会インフラ整備、健康医療情報の標準規格の社会全体への実装が早期に求められることや、研究推進のための人材育成が重要になるとし、産官学が一体となった強力な対策の推進が必要と呼びかける。
康永秀生氏(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学)は、厚生労働科学研究DPCデータ調査研究班では、全国の約1100DPC病院から年間約800万人の退院患者のデータを収集して臨床疫学研究に活用しているとし、DPCデータ等を用いた臨床疫学研究の実例として、▽敗血症に対する薬物治療および血液浄化療法の効果▽脳梗塞に対する薬物治療およびリハビリテーションの効果――を紹介する。
頭金正博氏(名古屋市立大学大学院薬学研究科医薬品安全性評価学分野)は、ナショナルレセプトデータベース(NDB)を用いて医薬品の有効性と安全性を評価する研究の一環として実施した、周術期における麻酔薬によるせん妄の発症要因に関する研究や、周術期スタチン使用の有用性に関する研究の概要を紹介し、NDBを用いる薬剤疫学研究によって、周術期における薬物療法の有用性の評価が可能であることを提示する。
佐井君江氏(国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部)は、アロプリノールによる重症薬疹を対象として、そのリアルワールドにおける発症リスクの民族差評価をテーマに日本、韓国、台湾が連携して、各国のレセプトデータベースを用いて実施した共同研究事例を示し、各国のレセプトデータベースを用いた国際共同研究の有用性や課題について考察する。