米国のサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)問題に端を発した金融危機は、世界経済に大きな打撃を与えている。住宅と金融のバブルが相まって膨張した証券化商品の破裂に伴い、次々と各国の大手銀行やリーマンブラザーズなど証券会社の破綻を招いている。
27日の東京株式市場では、日経平均がバブル経済崩壊後の最安値を割り込み、26年ぶりの安値を記録。輸出企業は想定を上回る勢いで進む円高の影響を受け業績の先行き懸念が生じ、トヨタをはじめとするグローバル企業の株が売られ続けている。その結果、不動産、設備、預金などの保有資産から算出した企業価値を下回る株価を示す銘柄が後を絶たない。
日本の株式市場の6割のシェアを占める外国人投資家の売買が目立ち、国内の機関投資家はほとんど売り買いに参加していないのも、現在の国内証券市場の特徴の一つになっている。
米国が75兆円の公的資金を投入し、銀行などの金融機関が保有する不良債権の買取を表明したり、欧州でも公的資金による大銀行の資本増強などが行われているにもかかわらず、世界の金融システムに対する不安と動揺は収まりそうにない。
その要因は一体どこにあるのか。ある日本の経済学者は、「米国の一般消費の仕組みに対する不安が根源にある」とズバリ指摘する。今回のサブプライム問題は、ローンを返済する当てのない人でも住宅が買え、さらに住宅の値上がりを当て込んで、多額の借り入れもできるという仕組みが原因となって発生したからだ。
だが、このようなことを二度と起こさないための監視体制と法的な規制の具体策を、米国政府はまだ示していない。具体策が出来上がるのは早くて来春と聞くが、「それが示されれば世界の株式市場も反転してくる」と見るこの経済学者の予測は、恐らく外れることはないだろう。
では、わが国の製薬企業は、世界同時株安でどのような影響を受けているのか。企業評価では、武田薬品や小野薬品など、財務基盤が強固で利益率の高い企業が見直される傾向が出ている。その一方で、借り入れをしてベンチャーを取得した製薬企業への評価は芳しくないようだ。
だが、電気・ガスと共にディフェンシブとされる製薬企業に対する今回の金融危機の実質的な影響は、ほとんどないと言っていいだろう。資源高による利益の圧迫も軽微で、売上高も景気にあまり左右されない。幸か不幸か、未だにグローバル化されている企業は限られており、為替の影響もそう多くはないと思われる。
当期純利益については、保有株式の評価損が30%以上下落した場合、特別損失として計上しなければならないので、一時的に減少する可能性はあるものの、中・長期的に見て業績に大きな影を落とすことはないだろう。これまで懸念されてきたわが国の製薬企業の敵対的買収も、海外の投資ファンドが投資家の資金引き上げや、株式の大幅下落の影響を受けて、基盤の縮小を余儀なくされており、その可能性はほとんど考えられない。
今こそわが国の製薬企業は、そのディフェンシブの特徴を限りなく生かして、各社が保有するパイプラインを確実に市場に送り出せるように尽力してほしい。