新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種体制構築に向けた取り組みが、国内でも各自治体などで始まった。昨年12月にファイザーが承認申請を行ったmRNAワクチンが特例承認の適用などによって、順調に審査が進めば来月中旬以降にも承認される見通しで、第1弾の接種はファイザーのワクチンで行われることになる。
厚生労働省は、来月にも医療従事者等を対象に優先接種を開始する計画であり、自治体を通じて接種会場の確保やフローなどの体制整備を進めている。医療従事者等の範囲については、新型コロナウイルス感染症患者(疑いを含む)と頻繁に接する機会のある医師や職員で、診療科や職種は限定されていない。
また、薬局では薬剤師のほか、登録販売者など感染患者の対応を行う可能性のある従事者も範囲に含まれた。
一方で、ワクチンの接種については、当然強制ではなく、個人の判断に委ねられている。こうした中で、一般生活者には、未だ正確な情報が行き渡っていないという印象を受ける。ある調査会社が行った新型コロナワクチン接種に関するインターネット調査では、約3割が「接種したくない」と回答。その理由として「副反応の怖さ」を挙げる人が多かった。
既に接種が開始されている海外の状況を見渡しても、アレルギーなどの副反応が見られた事例のほか、因果関係は不明ではあるが、基礎疾患を持つ高齢者でワクチン接種後の死亡例が報告されている。
医療従事者に関しては、使命感から比較的接種に前向きという話が聞かれているものの、「推奨しない」とする向きも少なからずあるようだ。
ワクチン接種を躊躇する背景としては、効果や接種による副反応などが未知数であることが最大の要因と言える。現在までにワクチンの効果について、正確な説明ができるエビデンスも整っていないことも大きい。
喫緊の新型コロナウイルス感染症対策としてのワクチン接種は、まさに「走りながら考えていく」という様相を呈している。
ワクチン接種の意義は、新型コロナウイルス感染症に限らないことだが、ウイルス感染症による疾患の発症予防や重症化予防にある。
また、接種による副反応などのリスクを上回るベネフィットが確立されていることも重要である。
医療従事者等の次には、高齢者に対するワクチンの優先接種が計画されており、高齢者をはじめとする人たちに、どのような説明を行うかも大きな課題となっている。
今も世界規模でワクチン接種の取り組みが進められているが、その効果を判断するには年単位での観察が必要になるだろう。まずは、ワクチン接種が進むことにより効果が発揮され、新型コロナウイルス感染症の完全終息への道が開ける年となることを切に願いたい。