政府は7日、新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受けて、首都圏の1都3県に再び緊急事態宣言を発出した。第1波が落ち着きを見せた昨年5月25日に、前回の宣言が解除されて以来7カ月ぶりとなった。
宣言後の3連休の人出は、主要ターミナル駅や各繁華街で前週よりも減少したものの、前回宣言時に比較して数倍となっており、緊急事態という言葉も2回目だとインパクトに欠けるようだ。
連日のように医療現場や保健所の過酷な業務実態が取り上げられているが、それでも人々は出社し、買い物や飲食のために街へ繰り出している。生活と雇用維持のために仕事を継続することも、国家財政に影響する経済を回すことも必要であり、リモートワーク対応、飲食のテイクアウトなど、様々な場面でそれぞれが工夫して努力している。しかし、街角インタビューなどからは、前回ほどの緊張感は全く感じられず、自分だけは大丈夫だと思い込んでいるように見える。
以前、ある閣僚は、日本が欧米先進国に比べて感染者数、死者数が本当の意味で桁違いに少ないことに関して、「日本人の民度が高いからだ」と言っていた。その意見に対して、今の日本の現状を見て同じことを語れるのか甚だ疑問である。
物事を決める際の判断指標となるのが確かな数値をベースとしたエビデンスだが、実効性を上げるためには各自の責任ある行動が必要である。いくら対策のためのエビデンスを示しても、人が自覚して行動しなければ水疱に帰す。
人々の行動、当局の規制などによる新型コロナウイルスの封じ込めと共に、ワクチンと治療薬の開発も急がれている。一部のワクチンについては、欧米などで早くも接種が始まっており、日本政府も2月下旬までに接種開始を目指す方針を示している。
1日当たりの新規感染者数が6万人を超えている英国政府は、大阪大学と中外製薬が開発した関節リウマチ治療薬「アクテムラ」とサノフィの「ケブザラ」を集中治療室の重症患者へ投与することを推奨する方針という。IL-6阻害剤であるアクテムラは、英国で実施された臨床試験によって、重症患者の死亡率を24%低減したほか、集中治療室に入っている期間も短縮できたとの結果を示した。
未だに感染爆発が止まらない英国では、科学的に効果が判明した対処法を迅速に実現することが急務となっており、決して闇雲な「溺れる者は藁をも掴む」という状況ではない。科学的エビデンスは、政策決定で重大な位置を占める。わが国でも危機感に慣れてしまった人々の惰性による行動を変容しなければ、新型コロナウイルスを克服できないことは自明である。